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ヒバゴン発見騒動からすでに半世紀。地元の古社が秘蔵する絵図にその姿が鮮明に描写されていた。謎に覆われた怪獣の正体がついに明らかに!
1970年の夏のことである。
広島県北東部にそびえる比婆山の麓一帯(現・庄原市西城町)で、「謎の怪物を目撃した!」という情報が相次いだ。さまざまな証言を集約すると、「身長は約1.6メートル、顔は逆三角形、体つきはゴリラに似た、謎の類人猿」というのがこの怪物のおおよその姿で、出没地にちなんで「ヒバゴン」と命名された。日本のUMA(未確認動物)の先駆けである。
その後も目撃情報が相次いでマスコミで盛んに報じられたため、ヒバゴンの名は瞬く間に全国に知れわたった。やがて、ヒバゴンの正体を突きとめるべく、各地から研究者がやってきて調査を行ったが、結局、「群れを離れた大ザル」「熊を見間違えた」といった推理は行われるも、明確な結論が出されることはなかった。そのうえ、1974年を最後に目撃情報は途絶えてしまい、正体が謎のまま、次第にヒバゴン騒動は終息していった。
ところが、ヒバゴン騒動が世間を席捲していたとき、地元の人々のあいだでこんな話がささやかれることがあったという。
「比婆山の麓に鎮座する熊野神社に秘蔵されていた絵巻に、じつはヒバゴンの姿が描かれている……」
比婆山の熊野神社は、創建年代は不詳だが、社伝によれば和銅6年(713)までは比婆大神社と称し、嘉祥元年(848)には社号を熊野神社と改めたという。主祭神は、『古事記』が比婆山に葬られたと伝えるイザナミ神である。神域は広大で、100株を越える巨杉が群叢し、森厳な古社の風致を形成している。

この古社が秘蔵するくだんの絵巻は、一般には公開されていないが、今回ムー編集部では、その一部を撮影した珍しい写真を、地元関係者を介して特別に入手することができた。


その写真が上記に掲載したものだ。この絵巻のタイトルは不明だが、内容は日本神話を絵解きしたものである。原本が劣化したため、幕末前後の時期に新たに描き起こされたのが現在の絵巻だと伝えられているが、その原本の制作年代や制作者は不詳である。
注目ポイントは、「国常立尊 又 天御中主尊」の姿として描かれた神像である。国常立尊は『日本書紀』の天地創世の場面で最初に出現する神、天御中主尊は『古事記』の天地創世の場面で最初に出現する神である。ともに神話冒頭に登場する始原の神だが、この絵巻では、全身真っ黒の、毛むくじゃらの怪物のような姿で描かれている──そう、まるでヒバゴンである!
遅くとも明治時代には存在していた絵巻に、1970年代に出没したヒバゴンの姿が描かれているというのは、いったいどういうことなのか。熊野神社があるあたりは、ヒバゴン目撃情報が最も多かった地帯である。すると、こんな可能性も考えられないだろうか。
「絵巻を描いた人物は、かつて熊野神社の近くでヒバゴンを目撃したことがあった。ヒバゴンを土地の神の化身と信じたその絵書きは、神話の原初神の姿を描く際、あのときの強烈な記憶をそこに投影させた」
つまり、ヒバゴンはかなり昔から比婆山周辺で目撃されていたとする解釈である。
あるいは、こんな仮説も可能だろう。ヒバゴン騒動が発生した1970年ごろは、ちょうど、比婆の豊かな森が切り拓かれて道路が敷かれ、スキー場やキャンプ場などの建設が進められた時期にあたる。そのため、地元では「文明社会が侵食する大自然の大切さを伝えるために、ヒバゴンは姿を現したのではないか。ヒバゴンは比婆山の神様の化身なのでは」というようなことをいう人もいたらしい。
国常立尊は国土や大地を神格化したものとされるが、こうしたことを踏まえるならば、絵巻の中で国常立尊の姿として描かれたヒバゴンは、比婆の大地を神格化したもの、あるいはその化身であるともいえるかもしれない。
最初の目撃情報からすでに半世紀以上もの年月が経過しているが、ヒバゴンをめぐる謎は今なお尽きることがない。

(月刊ムー 2023年12月号より)
古銀 剛
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