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台風の発生メカニズムや時期がわかっているなら、対策技術の可能性はないのか? サイエンスライターが「減災」テクノロジーを解説。やはり日本が人類を救うのだ!
地球温暖化により、年々、巨大化する台風。このまま地球温暖化が続くと、日本は風速67メートルを超えるスーパー台風が毎年襲ってくる、大変な気候の国になってしまう。
台風を小型化したり消滅させることはできないのだろうか?
1960年代のアメリカでは、米海軍を中心に台風やハリケーンのような大型熱帯低気圧を小型化する、ハリケーン人工制御研究プロジェクト(ストームフューリー・プロジェクト)が推進された。

振り返って、2008年の北京五輪の時に、中国が天候を快晴にするために空にヨウ化銀を打ち込んだことを覚えているだろうか。大気中にヨウ化銀を撒くと水蒸気が雲に変わり、人工的に雨を降らせることができるためだ。先に雨を降らせておくことで、大気中の水蒸気が激減し、雲のない快晴の空を作り出したのだ。
これを応用し、海上に台風があるうちに上空からヨウ化銀を撒くというのがストームフューリー・プロジェクトだった。ヨウ化銀を撒くと水蒸気が氷の粒に変わり、台風の周囲に巨大な雲の壁ができるという。この雲が空気の流れを遮断し、台風が巨大化するのを防ぐのだ。
プロジェクトではハリケーンの規模を10パーセント前後小さくすることに成功したが、台風を小さくするための条件がタイトであること(雲になるための水蒸気が十分にあるタイミングが見極めににくい)、自然への影響などから実用化は棚上げされた。

ストームフューリー・プロジェクトの結果、台風を小さくする方法は2つあることがわかった。
ひとつは同プロジェクトで行ったように空気の流入を防いで台風を成長させないこと、もうひとつは台風の成長させる海の熱を下げることだ。海の温度が上がると台風が発生する。逆に下げることができれば、台風は小さくなるのだ。
内閣府の進めるムーンショット型研究予算は、月にロケットを届くかせるような、未来に向けた先の長い科学研究を行う研究予算だ。ネットなどではメタバースばかりが注目されているが、9つの研究目標があり、そのひとつ、目標8は「激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現」とある。
まさに台風を科学の力で制御しようとする、日本版ストームフューリー・プロジェクトだ。

ムーンショット計画の目標設定では、使うのはヨウ化銀ではなく、氷である。理論上、熱エネルギーを奪ってしまえば、台風が小さくなるという。
2021年、横浜国立大学に台風科学技術研究センターが設立された。台風専門の研究機関で、ここで氷の散布で台風を小さくする研究が行われている。台風に氷をまくと、空気が冷えるために気圧の低下が抑えられる。台風の大きさは気圧で決まるので、気圧が低下しなければ、台風は大きくならない。
そして、このように台風を制御し勢力を落とすことで風速を3m/s減少させることができ、この風速3m/sの減少だけでも、建物被害は30%ほど抑えられる。金額にして1800億円もの経済損失を軽減できるという。
同センターでは台風を発電に利用することも考えている。台風発電帆船を台風の中を航行させ、海流でタービンを回して発電しようというもので、十分な船の数があれば、台風のエネルギーを電力に変えて弱めることも可能なのだそうだ。
台風を恐れず、果敢に挑戦する大和魂に感服である。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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