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民間伝承や怪談、都市伝説に登場する“主役”のキャラクターには、それぞれ何らかのメッセージが託されているといわれているが、村の子供たちをさらう“垂れ乳”の女妖怪「ウェウェ・ゴンベル」にはどんな“一分”があるのだろうか――。
子供たちを“垂れ乳”の下に押し込んで連れ去るという妖怪の伝説がジャワ島で語り伝えられている。
この恐怖の女妖怪「ウェウェ・ゴンベル」は単なる架空の都市伝説以上のものである可能性が否定できず、実際いくつかの行方不明事件がこの妖怪に関連していると疑われているようだ。
地元では、このウェウェ・ゴンベルの物語は何世代にもわたって行儀の悪い子供たちの間で恐怖の対象となってきた。悪戯ばかりしていると「ゴンベルにさらわれる」と親たちに諭されているのだ。
ではそのストーリーとは? 古代の民間伝承によれば、その昔、インドネシアの中部ジャワ州の州都・スマランに仲の良い夫婦が暮らしていた。
夫婦は仲睦まじく暮らしていたが、時が経つにつれて夫は妻がどうやら不妊症であることに気づき、夫婦の絆は揺らいだ。
夫婦の営みはなくなり、夫はわがままになって妻を無視するようになり、妻は悲しみの中で暮らすことになった。そしてある日、妻は出かけていった夫を尾行してみると、ほかの女と逢瀬を重ねていることがわかったのだ。
夫の裏切りに傷ついた彼女は激怒し、行為中の寝室に押し入って夫を殺害したのである。
彼女の暴挙に村人たちは危機感を抱き、組織的に彼女に嫌がらせをして村から追い出そうとした。この絶え間ない迫害に耐えられず、彼女は自ら命を絶ったのだった。
死後、彼女の復讐心は実体化し「ウェウェ・ゴンベル」となって村に出没した。自分が授かることができなかった子供をさらって下乳の間に詰め込んで“保護”する女妖怪として生まれ変わったのだ。
地元の言い伝えによれば、彼女が誘拐した子供たちは親から虐待されたり育児放棄されていた子供たちだという。彼女はさらった子供たちをお婆ちゃんのように愛情を込めて扱い、親が悔い改めるまで世話をして守り、親が心から反省したら子供たちを実家へ返していたということだ。
ウェウェ・ゴンベルはインドネシアの地元住民の間で単なる都市伝説以上の懸念を引き起こしており、実際に起こった悲惨な事件がゴンベルの出現の噂と関連づけられている。
2017年、スマトラ島の都市・メダンで子供が跡形もなく失踪した事件では、翌日にその子供が藪の中から混乱した様子で再び現れて一件落着となったものの、ゴンベルの関与があったと多く人々が考えているという。
ゴンベルの伝説について疑いを持つ人々も少なくないが、そうした人々はゴンベルは自らの不妊症から子の親を憎んでいるのだと解釈している。つまり、ゴンベルは“復讐鬼”であるというのだ。しかしゴンベルは誘拐した子供を大切に養育し、親が改心すれば子供を返していることから、そう単純に決めつけられるものでもないだろう。
ゴンベルの出現を暗示する“状況証拠”として、彼女が目撃されたとされる場所や、彼女が子供たちを連れ去ったとされる場所でブラジャーが見つかることが多いという。そして民間伝承によると、彼女は虐待的な親を持つ子供だけを誘拐する。
これが育児放棄の罪悪感を大人たちに植え付けるための行動なのか、それとも単にネグレクトされた子供たちを救う行為なのかは議論の余地がある。
英紙「Daily Star」によれば、社会心理学のリサ・ペルマナデリ氏は、この幽霊は「仏教とヒンズー教の文化に大きく影響を受けている」と語り、それはつまりゴンベルは「神聖な存在」なのだと説明している。
ゴンベルの物語について議論は続いているが、基本的に怪談にはメッセージ性があり、それは永遠のテーマとして続くことを意味すると同氏は付け加えている。
「テクノロジーは常に進歩していますが、怪談は常に残ります。これらの話には先祖から受け継がれたメッセージが含まれており、そう簡単には失われません」(リサ・ペルマナデリ氏)
育児放棄は近年増加傾向にあるともいわれているが、目に見える証拠がない事例が多く、断定が難しいともいわれている。犠牲者が発覚してようやく虐待が明るみになる痛ましいケースも少なくない。
ウェウェ・ゴンベルが育児放棄に警鐘を鳴らす存在だとすれば、社会から育児放棄がなくなるまでは、ゴンベルには仕事をしてもらわなければならないようだ。
【参考】
https://www.dailystar.co.uk/news/weird-news/legend-female-ghost-who-swiped-30978483
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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