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矢加部幸彦 著
「引き寄せようとしないこと」が「引き寄せの法則」
標題だけを見れば、よくある「引き寄せの法則」を、神道風にアレンジしてみました、というような安易な内容かと思われるかもしれないが、さにあらず。
最初のほうこそ、巷にあふれる軽佻浮薄な「引き寄せ」ブームを紹介しつつ、これに軽く苦言が呈されたりしているが、いつしか著者の筆は、神道における神とは、そして人間とは何かといった、玄妙な領域にやすやすと分け入り、気がつけば読者は古神道の深遠な世界を感得している。本書を虚心坦懐に読むならば、「現代では忘れられかけている神ながらの道の神髄の片鱗」に辿り着くことも容易であろう。
中でも、『古事記』にある「天岩戸開き」の物語を、「祈りや想念の具現化の仕組み」の雛型とし、「宇宙生成化育」の再演として読み解くくだりは、まさに圧巻。「引き寄せようとしないこと」こそが「神道引き寄せの法則」であるという指摘には思わず膝を打つ。
著者の矢加部幸彦氏は、古神道修道士にして、神道音楽家。本誌の読者なら、あの古神道界の重鎮・大宮司朗師の門人であるといえば、ピンとくるだろうか。本書は、そんな著者が前著『神ながらの意識』に続いて世に問う2冊目の著書である。本書を読んで気に入った方は、ぜひ前書も併せてご覧いただきたい。
非常に真摯かつ丁寧な文体で、読んでいくだけで心が浄化されるような心持ちがする良書である。

(月刊ムー 2024年10月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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