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都市伝説ウォッチャーの漫画家・石原まこちんが散歩気分で高みを目指すルポ漫画、6回目! 今回は「ビブリオマンシー」の回で暗示された「河童の手」のご開帳に立ち会いました。
今回の「河童の手」はいつでも見られるものではなく、毎年6月の第一土曜に開催される「佐野子のかっぱ祭り」でご開帳されるもの。ムーさんぽ連載の当初から「6月は河童の手!」と狙っていたのだが、2020年はコロナ禍であえなく延期。
そもそも6月6日だったら別件で取材しにくかったのだが、延期によって別日に取材できたのは一転のラッキー。さらに、行きの道すがらまこちんさんが高速道路で迷いに迷うとか、それでも到着時間にはほぼ遅れないとか、ビブリオマンシーが示したとおりの「ストレートにいかない」暗示が見事的中。書物占い、おそるべしである。




”河童の手”の伝承をおさらいすると……。
時は室町時代。
桜川に棲む河童がたびたび悪さをする。農耕馬を川で洗っていると尻尾を掴み、川に引き込もうとするなど、その悪行は目に余った。
そこでついに、村の力自慢、宇八が河童を捕まえて縛り上げた。苦しめられてきた村人たちは「そんな河童は殺してしまえ!」と大騒ぎ。ところが、満蔵寺の妙沢和尚が情けをかけて、その河童の手を切り落とす(抜く、ひきちぎる)ことで放免することになった。
その河童は後に和尚のもとを訪れ、お礼として傷薬を伝え、去っていったというーー。
――その河童の手が、今も満蔵寺に保管されている。

「河童の手を切った(抜いた)」宇八の子孫は今でも佐野子在住で、坂本實さんという。ご本人はいたって温厚そうな方だった。
地元民だけに知られていた河童の手だが、2010年に土浦市70周年企画を練る中で、隠れた名物として“発掘”された。確かに河童の伝承は日本各地にあるが、「手のミイラ」の現物は珍しい。その勢いで銅像を建て、祭りを企画し、河童……でなく妙沢和尚を顕彰し、軽トラ市で住民が参加できるイベントが仕上がっていったパワーがすごい。河童の具体的なご利益を感じた。
「かっぱ祭り」を通じて知名度が高まり、テレビや雑誌、日本各地の博物館からの貸し出し依頼が増えた。だが貸出先が雨や洪水に見舞われることも多く、現在は扱いが慎重になっている。
とくに2016年に八戸で開催された「かっぱ展」に貸したときは、現地が大雨になって大変だったとか。……だが、その際に撮ったレントゲン写真は興味深い。

骨がしっかりとあり、作りものではないことが明らかだ。江戸時代に盛んに作られた「妖怪ミイラ」とはまったく別ジャンルの”現物”である。上野動物園でも「なんの動物かわからない」と言われたそうだ。
ちなみに……そんな”知られざる”名物だったのだが、なんと「ムー」では1991年6月号で紹介していた! 今回は約20年ぶりの訪問で、前回を覚えている方もいなかった。

当時は「かっぱ祭り」が定期開催される前。どうやって「河童の手」の存在を知ったのやら……。往年のムー編集部の情報網もおそるべしだ。
冷静に情報を整理すると、室町時代という年代を確定させる要素はない。手の現物をつぶさに観察すると、10センチほどの「右手」はミイラ状態ながら、水かきのようなものと、爪が残っている。過去のレポートでは15センチとあるので「小さくなった」「縮んだ」らしい。
河童伝承の数々で、いたずら河童の退治、お坊さん、薬のコンボはよくある。邪推すれば、たいていはエピソードとしてお坊さんが唐突にいいところを持っていくパターンであり、お寺に保管されていた”秘宝”の逸話として仏教説話、お坊さんの活躍話が添えられたのでは……という気もする。
だが、この桜川の河童は一匹でなく集団で、関東を仕切っていた女棟梁・禰禰子河童とのかかわりも伝えられている。単独の妖怪や“荒れる川”のイメージを集約した存在ではなく「村の近くに実際にいた集団」を思わせる。
当時、霞ヶ浦~桜川までを仕切っていた漁労・海賊の集団と、農業を営む集団との間に軋轢があったのではないだろうか。水源の川の利権を争いつつ、”河童”集団から「治水・灌漑の知識を得た」「そのうえで追い払った」とも解釈できる。……というのはつじつまがあいすぎて面白くないのだが、
その漁労集団は体の小さな、ヒトではない異人類だったのかもしれない。
遺された”手”を通じて、かつて佐野子に生息していた「彼ら」の正体が明らかになる日が来るだろうか。
(写真は以前のもの)


石原まこちん
漫画家、都市伝説ウォッチャー。代表作「THE 3名様」のスタイルで「キン肉マン」のスピンオフ「THE超人様」、CIAが主役の「陰謀論THE3名様Q」などに世界を広げる。「ムー」で4コマ漫画「オカルとおさん」を連載中。
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