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世界で最も醜いUMAとは――!? 全身イボだらけでいつも泣いて涙を流している情けなくも愛らしいUMAが「スクオンク」である。そのルックスから長らく顧みられなかったスクオンクであるが、社会の側に変化の兆しが見られるようだ。
多くのペンシルベニア州の住民にとって、スクオンクのストーリーは子どもの頃に誰しも聞かされる言い伝えであり、文字情報としてはウィリアム・T・コックスの1910年の著作『Fearsome Creatures of the Lumberwoods(ランバーウッズの恐ろしい生き物)』の中で初めて記された「最も陰気な怪物」である。
ペンシルベニア州の森に棲むスクオンクは顔をはじめ全身がイボだらけで、地上に生息する生物の中でも最も醜い部類に入るという。スクオンク自身もそのことを自覚しており、普段は草むらの中にうずくまり、自分の姿を恥じ、絶えず涙を流して泣いている。
ハンターは涙の跡をたどってスクオンクの追跡することができるほどであり、絶え間ないすすり泣きが聞こえるほど接近することができる。
しかし、このUMAを追い詰めた者でも実際に捕まえることはできない。追い詰められ逃げられないことを理解したスクオンクは、さらに大量の涙を流し、なんとその涙で全身が溶けて液体となって消滅してしまうのだ。
林野局職員のJ・P・ウェントリングは、かつてスクオンクを捕獲して袋に入れて持って帰ったということだが、袋を開けてみると「涙と泡しか入っていなかった」と報告している。
スクオンクは、ジェネシスの1976年の曲『Squonk』から、ピッツバーグを拠点とするパフォーマンスアートの一団「スクオンクオペラ(Squonk Opera)」など、ポップカルチャーに多大な影響を与えてきたが、モスマンやワンプスキャットなど、ニューヨーク州からミシシッピ州まで伸びるアパラチア地方の他のUMAが脚光を浴びる一方で、スクオンクは地味な存在として忘れ去られそうになっていた。
しかし、2人の人物がスクオンクの惨めなポジションを押し上げるべきだと判断した。「Cryptid Comforts」の創設者リサ・ラッセル氏と「Cryptoteeology」のオーナー、ジョー・フォグル氏は、どちらも全国各地で行われるUMAのイベントに頻繁に参加するベンダーである。
ある日、2人はスクオンクの話題で意気投合し、スクオンクを前面に押し出したイベントを開催することを決めたのだった。
2023年8月、アパラチア地方の民間伝承と未確認動物学のファンたちが、ペンシルベニア州ジョンズタウンに集結し、初のスクオンクのイベント「スクオンカパルーザ(Squonkapalooza)」を開催した。
60を超えるブースに加え、イベントのアクティビティには、スクオンクを褒めるキャッチコピーのコンテスト、スクオンククエスト、ゲーム、音楽、ペンシルベニアの伝承からビッグフットの存在の有無まで、さまざまなトピックが盛り込まれ、スクオンクのコスプレイヤーがフラフープに挑戦することもあった。
当初は一度限りのイベントとして構想されていたが、町を訪れてイベントに参加したUMA物愛好家の多さから、創設者たちは毎年恒例のフェスティバルになる可能性に気づいた。
二度目となるスクオンカパルーザは2024年8月10日に開催され、ジョンズタウンのセントラルパークに設置されたブースを何百人もの来場者が見て回り、州立劇場では講演、ポッドキャストの録音、映画上映などが行われ人気を博した。
2024年のイベントは予定時間を超えて延長され、前日の金曜日には音楽イベントやスポーツパブでのアフターパーティーも行われ、主催者は今後も何年も続けていきたいと考えている。
実のところジョンズタウンはペンシルベニア州の町の中でも地味な存在で、2003年の国勢調査では、ジョンズタウンはアメリカで最も新規居住者に不人気な都市であることが示されている。
ジョンズタウンには水にまつわる悲劇の物語があり、1889 年の大洪水では6.5平方キロが水没し、1600軒の家屋が破壊され、2200人以上の命gが奪われた。
1936年の大洪水でも大打撃を受けたが、その後に不屈の精神で立ち直り、ペンシルベニア州の鉄鋼産業の主要プレーヤーになった。
しかし、1977年の三度目の大洪水が、地場産業となっていた鉄鋼産業にダメージを与え、町は再び低迷することになる。
だが今回の2年連続のスクオンカパルーザは、この町の悲劇的な歴史とは別の新たなアイデンティティを与え、住民や観光客が新しい視点でジョンズタウンを楽しむ機会を提供することになった。
スクオンクのイメージも過去数十年で変化を遂げてきている。
ペンシルベニアの人気ポッドキャスター、クラウディア・ディミュロ氏は番組の中で「現代のポップカルチャーはスクオンクをいくぶん英雄的なイメージに作り変えました」と述べ、スクオンクを哀れな生き物から「不器用ながら孤高の存在」へと昇格させた。
世界で最も醜いUMA、スクオンクをフィーチャーすることで、ジョンズタウンの住民とその訪問者に自分の不安や欠点にうまく付き合っていく生き方を提案し、同時に長い間無視されてきた地元の伝説があらためて日の目を見ることになったのだ。ジョンズタウンの“町おこしキャラクター”として見事に復活を遂げたスクオンクから学ぶべきことは多そうだ。
【参考】
https://www.atlasobscura.com/articles/squonk-festival-pennsylvania
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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