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UMAや妖怪はその姿をなかなか現さず、実体はあいまいなまま。だが、それらの「骨」があれば……? 江戸時代に記録された「怪獣の骨」の資料を辿る!

江戸時代、日本各地で発見された怪獣たち。生け捕られたものや、第3回で紹介したネコ型人魚のように死亡直後に確保されたと思しきものもいる。しかし、なかには発見時すでにホネになっていたという例もあった。怪獣の骨格標本といったところだが、そんな「怪骨」のなかでもとりわけ奇妙なもののひとつが、羽州米沢でみつかったという上の図のものだ。
エイリアンの頭がみっつくっついたような、見るからに異形の骨。ヘビの頭のようにみえなくもないが、眼窩にあたる部分もはっきりせず、やはりヘビというよりエイリアンかワラスボあたりを連想してしまう。あるいは、映画『シン・ゴジラ』のラストシーンで映し出された、凍結したゴジラの尾の先端のような……。
ともかく文を読んでみると、この骨は「三頭蛇骨」と呼ばれており、羽州米沢(現在の山形県米沢市)の寺でみつかったものだという。日朝寺という寺が屋根の葺き替えをした際に出てきたもので、発見場所からして屋根裏に住んでいたものの骨なのだろう、と推測されている。
この寺近くに住んでいた者は、夜毎に光るものを目撃したり、騒がしい音を聞いたりすることがたびたびあったそうで、それもこの蛇の仕業だったのだろうと納得したのだとか。
また米沢には以前にも「ヨコヅナ」という両頭の大蛇が出没していて、この三頭蛇もおそらくおなじ「ヲロツチ」つまりオロチの類だろう、と結ばれている。
骨格に肉付けした姿を想像するに、これが大蛇であったなら相当動きにくそうにも思えるが、このように胴の両側に頭のついたヘビとしては、『博物誌』などに記される古代ギリシアの怪物アンフィスバエナが知られる。頭がふたつならんだタイプの両頭蛇は現在でもたびたび発見されてニュースになるが、古代中国では両頭の蛇は見ると遠からず死んでしまうものとして恐れられていたという。
それにしても、こんなものが本当に寺の屋根裏を巣にしていたのだとして、いったい何を、どう食べて生きていたのだろう。

蛇の骨をさらにややこしくしたような怪骨の図も残されている。上は幕末〜明治期の絵師服部雪斎が写生した「蛇骨」。
その姿は、ネズミかウサギのような頭に、おそろしく長い胴体がくっついたまったく奇天烈なものだ。肉付けした状態を想像するとかなりグロテスクだが、さすがに絵師も怪しんだのか「これはネズミの骨とヘビの骨をあわせて偽造したものじゃないのか」との感想を記している。
前足のうしろあたりに不自然な骨の切れ目があったらしく、そこでつないだのではないかというのが絵師の観察眼による見立てのようだ。
その真偽はひとまずおいて、これほど奇妙な骨がどこにあったのかも気になるところだが、絵師の書き記した文には「堀田摂州」の名前がみえる。同じ通称で知られる大名は数名いるが、おそらくここでの堀田摂州とは蘭学を保護したことで知られる江戸後期の大名・堀田正敦のことで、この骨が彼の博物学的コレクションであった可能性も考えられる。

大蛇、怪蛇とくれば、その上位互換的霊獣・龍の骨も気になってくる。古来、中国では古代生物の化石が「龍骨」として漢方薬の原料にされていたが、上の図は龍は龍でも「鼉龍頭」と添え書きされたものだ。
鼉龍とは想像上の生物だが、一説では爬虫類のワニをさすといわれる。とすればこの図もワニの頭骨ということになるが、いきものに興味のある方であれば、歯並びなどからみてもこれはワニでなくイルカ類のものなのではないか、とピンとくるのではないだろうか。
江戸時代にはイルカ漁をしていた地域も少なからずあり、骨の入手そのものはそこまで難しくなかったはずだし、じっさいイルカの骨を見たことのある人も一定数いたのではないかと想像できる。
それでもこの骨が「鼉龍」として伝えられたのは、どうせ珍奇な品であるならば、より珍しいものであってほしい、との人々の気持ちが反映されていたのかもしれない。
図版出典一覧
三頭蛇骨『動物写生図』(国立国会図書館デジタルコレクション)
蛇骨『写生物類品図』(国立国会図書館デジタルコレクション)
鼉龍頭『錦窠魚譜』(国立国会図書館デジタルコレクション)
鹿角崇彦
古文献リサーチ系ライター。天皇陵からローカルな皇族伝説、天皇が登場するマンガ作品まで天皇にまつわることを全方位的に探求する「ミサンザイ」代表。
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