動物か植物か妖精か? 不思議な生き物と未知の惑星を行く『ピクミン4』/卯月鮎・ゲームー案内
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ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々(ようかいほいほい)」! 今回は、正体がバレてしまった妖怪たちを補遺々々します。
(2020年4月8日記事を再編集)
【たらい坊】という怪物のお話をいたしましょう。
これは、とっても恐ろしい大入道の化け物。
どこの豪傑がどんな荒業で捕らえたか、とある地で見世物になっていたそうです。
看板には『たらい坊あらわる』と書かれています。
たらい坊、そいつぁ、どんな化け物だろうと、みんな興味津々。
どうれ、その面をおがんでやろうと入ってみると、そこには驚きの光景が!
盥(たらい)がひとつ。丸太ん棒が1本。大入道の化け物なんてこれっぽっちもいやしません。
そうです。これは「たらい坊」ではなく、「盥と棒」だったのです。
――これは、ただの一口話です。「たらい坊」という名前から【だいだらぼう】のような大きな化け物を想像していると、オチで「なぁんだ」となり、井戸端に子供の笑いが咲きます。
次は昔話ではおなじみ、寺の化け物退治のお話です。
ある村の山際に寺がありました。
そこは化け物が出るといわれており、だれも居つくことができず、檀家の人たちはとても困っておりました。
そんなある日のことです。弁慶のように強そうな和尚様が村にやってきて、「自分は何が出ても怖いとは思わない、化け物が出たら叩きのめしてやろう」と寺の化け物退治を申し出てくれました。
これは頼もしい。このまま和尚様が寺にずっといてくれたら檀家の人たちも大助かりです。
数日後――雨と風の強い夜でした。
風の音で目覚めた和尚様は、小便をしようと起き上がり、ふと外を見ました。
だみ小屋(荼毘小屋?)のそばで、白い化け物がふわっふわっと揺れながら、こちらを見ています。
和尚様はまさかりを掴むと、褌一枚の姿で雨の中を出ていき、エイヤァと、白い化け物をめちゃくちゃにぶった切りました。
「ふぅ、化け物を退治できてよかった、よかった」
ひと安心の和尚様、布団に戻ると、ぐっすり眠りました。
翌朝、あることを思い出した和尚様は、だみ小屋へ向かいました。昨日、汚れて黄ばんだ褌を洗って、そこに干していたのです。
ところが、干してあったはずの褌は地面に落ちている。それだけではありません。穴だらけの無残な姿になっていたのです。
和尚様は、風に揺れていた自分の褌を化け物と勘違いし、まさかりで切りつけていたのです。
ここまでは、化け物のでるでる詐欺。
まったく怖くもない笑い話でしたが、次の話はちょっと笑えません。
秋田県南外村(現・大仙市)の大畑というところに【小豆あらい(小豆とぎ)】という怪物が出ました。
これは夜になると「ゾクゾク、ザクザク」と音をたてて小豆を洗うもので、とくに村人が死んだ日に出たそうです。
そのころ、村の若者たちの間では、夜這いが頻繁に行われていました。
ある晩、夜這いを終えたばかりの若者が満足げに帰っていますと……帰り道の途中にある墓地の中をうろうろしている影があります。
ゾクゾク、ザクザク
小豆を洗うような音が聞こえ、ときどき、闇の中に輝くふたつの玉が飛んでいます。
若者は大慌てで逃げ帰り、家の戸を叩き開けると倒れ込んで、翌日に死んでしまいました。
この怖ろしい怪物【小豆あらい】を退治してやろうと、小十郎という村人が立ち上がりました。
彼は小豆あらいが出るのを、墓地のそばで7日7晩待ちます。
旧暦の9月3日の夜。
怪物はとうとう、異様な光る玉をともなって墓地に現れました。
小十郎は震え上がりましたが、気を取りなおし、木陰から怪物に飛びかかりました。
すると怪物は「キャンキャン」と鳴いて倒れます。
なんと、小豆あらいの正体は、死体を食いにきた野犬だったのです。
「ゾグゾク」は野犬が墓を掘り起こすために土をかく音で、「ザクザク」はかき出された土や石が墓標に当たる音でした。
怪物の正体を暴いた勇気ある彼の名前をとって、ここにある山は小十郎岳と呼ばれるようになったといいます。

参考資料
専修大学風土研究同好会『轍』第20号
大田区教育委員会『口承文芸』
本城屋勝編著『ひろし爺さまの昔話』
黒史郎
作家、怪異蒐集家。1974年、神奈川県生まれ。2007年「夜は一緒に散歩 しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞してデビュー。実話怪談、怪奇文学などの著書多数。
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