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イエスの母である聖母マリアは、カトリック教会では特別な信仰対象となっている。そのマリアが出現する奇跡譚は世界各地で報告されているが、カトリック教会が公認した代表的な聖母出現地が、世界には3つある。ポルトガルのファティマ、フランスのルールド、そして今回紹介するメキシコのグアダルーペだ。
メキシコ・シティの中心から、メトロバスで約30分の郊外にグアダルーペはある。この地のテペヤックの丘に聖母マリアが出現したのは、1531年12月9日のことだった。
先住民のフアン・ディエゴの前に現れたマリアは、褐色の肌をし、星で彩られたマントと光をまとっていたという。そしてディエゴに対し、この地に寺院を建てるように求めたのだ。
司教は最初、彼の話を信じなかった。ところが聖母マリアは再び現れ、証拠として冬に咲くはずのないバラの花をディエゴに託した。しかもバラを司教に届けた彼のマントには、聖母の姿が映しだされていたのだ。
さすがに司教も聖母出現の奇跡を認め、テペヤックの丘に聖母マリアを祀るグアダルーペ寺院が建てられたのである。

ところで聖母マリアといえば、一般的には白い肌で描かれることが多い。だが一方で、褐色もしくは黒色の肌のマリア像も存在し、これらは「黒いマリア」と呼ばれる。その理由については諸説あって、一般にはキリスト教以前に広まっていた大地母神信仰が吸収されたものだとか、聖母マリアの本来の肌の色を忠実に再現したものだなどと説明される。また、征服者が中南米の先住民を改宗させるためのツールとして褐色のマリアを生みだしたとする説もある。
メキシコのグアダルーペの聖母マリアの肌の色も、こうしたことが背景にあるのだろう。実際、人々の信仰心は今も篤く、メキシコ国内のみならず、ラテンアメリカ全域から毎日数千人もの巡礼者がここを訪れているのだ。
ちなみに聖堂に飾られたマントの聖母像は、不思議なことに現在もまったく色褪せていない。1785年には清掃の際に硝酸をかけられるという事故があったが、それでも聖母像は無事だったという。


中村友紀
「ムー」制作に35年以上かかわるベテラン編集記者。「地球の歩き方ムー」にもムー側のメインライターとして参加。
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