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意識の謎を解明する糸口がついに見つかったのか――。最新の研究は脳内で起きている「量子もつれ」が脳を同期させ、意識を発生させていると説明している。
以心伝心という言葉もあるように、お互いのことを知り尽くした一卵性双生児の兄弟であれば、離れていても一方が何を考えているのかわかりそうな気もするが(もちろん勝手なイメージではあるが)、量子論の世界では2つの粒子が分かちがたく結びつく「量子もつれ」という現象が起きている。量子もつれにある関係の2つの粒子は、驚くべきことに物理的にどれほど離れた距離にあっても相関関係が維持されているのだ。つまり、この2つの粒子は時空を超えて結びついていることになる。

かのアルバート・アインシュタインは、量子もつれを「不気味な遠隔作用」と呼ぶなど、この現象は発見当時最も聡明な人々さえ困惑させ、今日でもそのメカニズムは謎に包まれている。
そして、この量子もつれが我々の脳内で起きていることが最新の研究で報告されている。脳内の量子もつれこそが意識を発生させているのかもしれないというのだ。
中国・上海大学の研究チームが今年8月に「Physical Review E」で発表した研究では、神経細胞の軸索(他の神経や体組織に電気インパルスを伝達する繊維)を取り囲むミエリン鞘(ミエリンしょう)と呼ばれる脂肪質の物質が、光子の量子もつれが可能な環境を提供していることが示唆されている。そしてこれは、我々の意識を説明できる可能性があるという。
「脳内の意識は、何百万ものニューロンの同期した活動にかかっていますが、そのような同期を調整するメカニズムは依然として不明です」(同研究論文より)
そこで研究チームはミエリン鞘に着目したのだ。
「結果は、ミエリン鞘によって形成された円筒形の空洞が、振動モードからの自発的な光子放出を促進し、かなりの数のもつれ合った光子ペアを生成できることを示唆しています」(同研究論文より)
研究チームは、赤外線光子がミエリン鞘にどう影響し、どのような振る舞いを見せるのか詳細に記述した数学モデルを構築した。これにより、量子もつれになった光子ペアの生成が促進され、神経系内で一種の「量子通信リソース」として機能している可能性があることが示唆された。
つまり、脳内の情報伝達は一般的物理学を超えた量子論現象で行われており、そしてこの現象こそが我々の意識である、というのだ。
人間の脳はコンピュータに似ていることが長い間主張されてきたが、今回の研究ではそれが覆されることになる。
進歩を遂げたAIは今や囲碁や将棋で人間を凌駕するようになってはいるが、莫大な電力を消費するAIに比べて、人間の脳ははるかに“省エネ”できわめて効率的に動作している。
その秘密は脳内で発生している量子もつれにあり、量子もつれこそがAIがもたない意識そのものである、ということになるのかもしれない。古典物理学に基づいて動作しているコンピュータが人間の脳に追いつくには超えられない一線があるのだ。

人間の脳に量子特性があるという考えは新しいものではなく、イギリスの物理学者ロジャー・ペンローズとアメリカの麻酔科医スチュワート・ハメロフは、1990年代に意識の「オーケストレーションされた客観的還元」モデルの概念を提唱した。それ以来、多くの研究で脳にはいくばくかの量子特性があり、それが意識の生成に一役買っている可能性が示唆されている。
「量子もつれはこの(進化の)役割を担う理想的な候補となるでしょう」(チェン氏)
まずは、この現象がマウスの脳などの生物学的な環境で確認される必要があるのだが、そのプロセスは難しいだろうと研究者らは率直に認めている。さらに、量子もつれが意識の生成に重要な役割を果たしているという考えは残念ながら今のところは主流とは言えない地位にある。
しかし、科学は存在の真の性質を見極めるための仮説と厳密なテストを粘り強く続ける作業でもある。かつては「遠く離れた不気味な作用」のように見えた現象が、我々の心の理解を大きく変える可能性はじゅうぶんにあるのだろう。
【参考】
https://www.popularmechanics.com/science/a61854962/quantum-entanglement-consciousness/
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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