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超常現象の宝庫アメリカから、各州のミステリーを紹介。案内人は都市伝説研究家の宇佐和通! 目指せ全米制覇!
アメリカの都市伝説にも、“キャラ系“に分類できる話がいくつかある。今回紹介するのは、その代表格である「ジャージーデビル」。ニュージャージー州では今も、魔物ともUMAともいえる存在が日常生活レベルで語られている。

アメリカ北東部に位置するニュージャージー州は、合衆国の基盤となった13植民地の一つであり、歴史と文化、そして多様な景観に恵まれた州だ。北と東はニューヨーク州、西はペンシルベニア州と接している。ビーチウォークやカジノをはじめとする娯楽施設で有名なアトランティック・シティも擁しているが、ラスベガスほど派手ではない。ハドソン川を挟んでロウアー・マンハッタンと隣り合うジャージーシティは、ニューヨーク・シティのベッドタウンとしても知られている。アイビーリーグの1校であるプリンストン大学もニュージャージー州だ。
そして、ユニークな生態系と植物相で世界的に知られるパイン・バレンズという森林地帯があるのだが、この一帯こそがジャージーデビルが潜む場所とされている。
伝説の発端は18世紀初頭に遡る。当時、パイン・バレンズ近くの集落にマザー・リーズという女性が家族と一緒に住んでいた。彼女には12人の子どもがいて、13 人目を妊娠していることがわかったとき、「もうたくさんだ」と思ってしまった。

つわりもひどく、毎日苛立っていたマザー・リーズは「この子は悪魔に違いない」と毒づくことが多くなった。お腹の中で、実の母親の口から吐かれる”呪いの言葉”を毎日聞いて育った子どもは、生まれてすぐに蹄とヤギの頭、コウモリの翼、二股の尾を持つ怪物へと姿を変えた。そして煙突を駆け上がって外に出るとパイン・バレンズに逃げ込み、それ以来ずっと同地を彷徨い続けているという。ジャージーデビルの外見的特徴をまとめると、次のようになる。
・ 馬やヤギのそれに似たひずめ
・ コウモリのような形の大きな翼
・ ヤギや馬のような頭
・ 二股または蛇のような形をした尾
・ 真っ赤に光る両眼

ヨーロッパからの移民が多い東海岸の各州では、ヨーロッパの伝承や民話の影響が色濃く残った話が語り継がれている。ジャージーデビルの伝説も、最初は入植者の間だけで広まっていた話だったことが想像できる。
そのあたりをもう少し詳しく記しておこう。ジャージーデビルの物語には入植者たちが抱いていた悪魔と荒野に対する恐怖や迷信が反映されており、どちらもヨーロッパの民間伝承でよく見られるテーマといえる。怪物のような姿をした呪われた子ども、得体の知れないものが住んでいる深い森、どちらもヨーロッパ各国のさまざまな民話に見られるモチーフにほかならない。しかし、ジャージーデビルはその後、古い伝承の派生バージョンとしての都市伝説とは異なる展開を見せた。
1909年1月、ニュージャージー州全域と近隣の州で実際にジャージーデビルらしき目撃情報が相次ぎ、パニックが広がった。新聞には、足跡やその他の写真を含めた遭遇報告が連日掲載され、一部の学校や企業が一時閉鎖される事態にまで発展した(後になって、この時に新聞が掲載した“証拠”の数々は、ほとんどが偽物であるか、野生動物のものであることが確認されている)。
ジャージーデビルの目撃例は現在も地元のメディアや未確認動物学を専門とするオンラインフォーラムに次々とアップされており、注目を集め続けている。カナダヅルなど既知の動物の誤認だとする説もあるが、正体は判明していない。

このように、ネッシーやビッグフットと同じように隠棲動物的に捉えられるジャージーデビルだが、それと同時に、ルーガルー(人狼)やBEK(ブラック・アイド・キッズ)のような都市伝説の一種としても受け止められている。実際、多くのサイトがニュージャージー州で最も有名な都市伝説としてジャージーデビルを挙げている。
パイン・バレンズで起きる奇妙な出来事を説明するための民間伝承が元となった都市伝説に、隠棲動物としての具体的目撃例が絡み、何世代にもわたって語り継がれてきたというパターンは他にあまりないだろう。
そして、ジャージーデビルの特徴としてもう一つ挙げられるのが、キャラとしての州民との距離の近さだ。
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— NJ Devil (@NJDevil00) July 25, 2024
Let’s make next year even better! 📈 pic.twitter.com/OiBg52ZUe9
ニューアークを本拠地とするNHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)のチームの名前は「デビルス」だ。もちろんジャージーデビルを意識したもので、NPBチームでたとえるなら「広島ヒバゴンズ」みたいな響きになるだろうか。棲み処とされるパイン・バレンズの森では、ガイド付きツアーやハイキング、そして「モンスターハント」が人気のアクティビティとなっている。ジャージーデビルを使って、村おこしをはるかに超えたレベルの“州おこし”が何十年というスパンで続けられているのだ。冒頭で「日常生活レベル」という言葉を使った理由はここにある。
前述の通り、ジャージーデビルはその存在が科学的に裏付けられた隠棲動物ではない。ジャンルで分けるならUMAだ。それと同時に、長く語り継がれてきた民間伝承から生まれた都市伝説キャラでもあり、文化・観光・メディアといった各分野で積極的に受け容れられている。全州レベルで共通しているこういう空気の中、“実在する体”で接している州民も決して少なくない。ジャージーデビルという存在は、UMAであり都市伝説のキャラである以上に、ニュージャージー州民のアイデンティティの一部としてとらえるのが正しいのかもしれない。
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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