太陽信仰の拠点か、異世界との交信基地か? インカの空中都市マチュピチュの基礎知識
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、南米ペルーの急峻な山頂に築かれたインカ帝国の空中都市マチュピチュについて取りあげる。
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都市伝説には元ネタがあった。白いワンピースを着た巨大な女はどこから来たのか。
2008年8月26日、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のオカルト板に立てられた「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?196」スレッドにはじめて「八尺様」についての話が書き込まれた。
報告者によれば、これは報告者が高校生のころに実際に体験した話だという。
当時、報告者はバイクに乗って祖父母の家に遊びにいっていたが、縁側でくつろいでいるとき、「ぽぽぽ」という奇妙な声を聞き、帽子を被り、白いワンピースを着た身長2メートル以上もある巨大な女を目撃する。
報告者がそのことを祖父母に話すと、祖父母は血相を変えて詳細を求め、そして報告者が目撃したのは八尺様だと教えた。
八尺様はその名の通り身長が8尺(約240センチ)もある女性の姿をした存在で、老婆であったり、若い女であったりと容姿は一定しないが、いずれも背が異様に高い女性であること、頭に何か乗せていること、「ぽぽぽぽ」または「ぼぼぼぼ」という濁音とも半濁音とも取れない男のような奇妙な笑い声を上げることは共通している。八尺様は成人前の若い人間を好み、八尺様に目をつけられた人間は数日のうちに取り殺される。これは「魅入られる」と表現される。
そして八尺様から報告者を守るため、報告者の祖父がひとりの老婆を連れてくる。その老婆は報告者に札を渡すと、すべての窓を新聞紙で目張りし、四隅に塩を置いた部屋に入るようにいった。この部屋の中には木の箱の上に仏像があり、報告者は朝が来るまで決してこの部屋から出てはならないと告げられる。
そして迎えた夜、報告者はテレビを見るなどして恐怖を紛らわせていたが、午前1時過ぎ、外から祖父の声で「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」という声が聞こえてきた。一瞬戸を開けそうになった報告者だったが、朝まで出てはならないという祖父の声を思い出し、思い留まると、あの「ぽぽぽ」という声が聞こえ、窓ガラスをトントンと叩く音が聞こえてきた。
報告者はもらった札を握りしめ、ひたすら仏像に祈りながら朝を待ち、何とか恐怖の一夜を脱する。そして八尺様の目をごまかすために祖父が集めた親戚の男性たちに囲まれて車に乗り追いかけてくる八尺様から何とか逃れ、自宅に戻った。
しかし後日譚として、八尺様は報告者の祖父母が住む地域の一画に地蔵によって封じ込められていたが、その地蔵が何者かに倒されたために封印が解け、八尺様は今どこにいるのかわからない、と語られている。
その話の完成度、恐ろしさからネット上で広まり、現在もよく知られる八尺様だが、実はこの怪談に語られるような存在や要素は、近代以前にも登場している。まずはその名前の由来にもなった8尺という身長と同じ身長を持つ妖怪を紹介しよう。

柳田國男の著作『山の人生』では、熊野地方で身の丈8尺ばかりの女の死骸が山中で目撃された、という話が記されている。その女は髪が足に届くほど長く、口は耳のあたりまで裂け、目も普通よりは大きかったという。このほか、同書では近世の文献である『老媼茶話』を引いて身の丈7、8尺の山姥の話を紹介している。
この山姥は獣の一種で、老女に似ており、時たま人を捕らえては棲み処である岩窟に連れ去り、夫婦になるよう強制するのだという。またこの山姥は好んで小児を盗むという八尺様に類似した性質も記されている。同書にはほかにも身の丈8尺の山男や大人と呼ばれる妖怪について紹介しており、山には身の丈8尺ほどの人の姿をした妖怪たちがいたと伝えられていたことがわかる。
また、八尺様の話では、八尺様の侵入を防ぐために出入り口や窓を閉ざした部屋に籠もるという方法が語られたが、これも古くから類例がある。有名なのは、渡辺綱と鬼との話だろう。
中世に記された『平家物語』の「剣巻」では、渡辺綱は平安京の一条戻橋で美しい女と出会い、家まで送ってほしいと頼む彼女を馬に乗せる。しかし女は豹変して鬼と化し、綱を摑んで連れ去ろうとしたため、綱は刀でその腕を切り落とす。
綱が鬼の腕を持ち帰り、安倍晴明に見せたところ、7日間の物忌みをし、鬼の手を封じること、また仁王経による祈禱を行うよう指示される。綱がその通りにしていると、物忌み6日目に彼の養母がやってきて、上京したので顔を見たいという。綱は物忌みの途中だからと断るが、養母は生まれたときから育ててきたのに、子に親とも思われないのかと嘆いた。
そのため仕方なく綱が門を開いてやると、養母は物忌みの理由を聞き、ぜひ鬼の腕を見たいという。そのため綱が封じていた鬼の手を持ってくると、乳母は「これは私の手だ」といい、鬼の姿に変じて腕を奪い、消え失せたという。
戸を閉ざし、だれも中に入れずに過ごしていたところに親族に偽装した妖怪が現れ、戸を開けさせようとする展開は八尺様によく似ている。またこの鬼の正体は話によっては大江山の酒呑童子という鬼とともに京を荒らしまわった茨木童子という鬼だとされる場合もある。
このように、八尺様は古くから語られてきた妖怪たちの要素を併せ持っている。そして封印が解かれた今、彼女がどこに現れるのかはわからない。もし八尺様が現れたとき、渡辺綱のように妖怪と戦うほどの力がないのであれば、決して戸を開けてはならないだろう。


(月刊ムー 2024年7月号掲載)
朝里樹
1990年北海道生まれ。公務員として働くかたわら、在野で都市伝説の収集・研究を行う。
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