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オーストラリア北西部に、キンバリーという地区がある。日本とほぼ同じ面積に、4万人弱の人々が暮らす。と書けば想像がつくように、自然環境の厳しい土地だ。
高温多湿で、冬の7月でもほぼ連日、最高気温はセ氏30度を越え、夏になれば40度以上になる日もある。降水量も多く、強い風も吹く。
そんな大地で暮らしてきた先住民アボリジナルの神話に登場するのが、雲や雨、あるいは風や雷の精霊であるワンジナ(ウォンジーナ)たちだ。もちろん彼らは厳しい自然の神だから、うっかり怒りを買えば、たちまち暴風や大雨、洪水をもたらして生活を脅かす。

その一方で、天地が創造されたときには豊かな山や森、海、川や生き物を創りだした神のような存在でもある。
だから先住民アボリジナルの人々はワンジナに対する思いを、長い年月をかけて岩絵として残してきた。そのためキンバリーでは、いくつもの洞窟で、岩に描かれたたくさんのワンジナの顔を見ることができる。
特徴として、まずは赤や黄色の太いラインで顔の輪郭が描かれるのだが、これがまるで後光が差しているかのように見える。また、両目と鼻はつながっていて、口はない。それは、ワンジナに口があると雨がやまなくなるからだとも、あるいは言葉を話す必要がないほど彼らの力が強いからだともいわれている。
岩絵が描かれはじめたのは、3000年から5000年も前。なかには近年のものや、何十層にもわたって塗料が塗り重ねられているものもある。これはまさに、先住民アボリジナルの精霊信仰が今でも生きていることの証明なのだろう。

当然ながら、現地の交通の便はあまりよくない。見学する場合、キンバリーにあるブルームか隣の州都ダーウィンを目指し、ツアーに参加するのがいいだろう。


(月刊ムー 2024年6月号掲載)
中村友紀
「ムー」制作に35年以上かかわるベテラン編集記者。「地球の歩き方ムー」にもムー側のメインライターとして参加。
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