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西欧近代科学の巨星、アイザック・ニュートンはその優れた科学研究の一方、聖書の黙示録預言の解読にも没頭しており、いずれはこの世に“終末”が訪れることを信じて疑わなかったといわれている。ではニュートンは、いつこの世が終わると考えていたのか? 遺された彼の書簡には“2060年”という年が記されていたのだが――。
木から落ちるリンゴを見て「万有引力の法則」を発見したという有名なエピソードで知られるアイザック・ニュートン(1643~1727)だが、古典力学の構築や微積分法の発見などの重要な科学研究に励む一方、中世の残り香であるような錬金術の研究や聖書の解読にも没頭していた。
遺稿のメモなどから、ニュートンは旧約聖書の「エゼキエル書」と新約聖書の「ヨハネの黙示録」に登場する「ゴグとマゴグ」の戦いが終末の世で起こることを信じていたといわれている。つまり聖書に記された世界最終戦争(ハルマゲドン)によってこの世が滅びることを確信していたのだ。
世に公開されることを意図していなかったと思われるニュートンのいくつかのメモには、聖書の出来事に対するプロテスタント的理解に基づいて、世界の終わりを予測しようと試みたものもあった。ある試みでは、計算式と共に“2060年”についての言及があり、そこには暗号のようないくつものステートメントが記されていた。
さまざまな聖書的な数字が登場するのだが、(簡単に言えば)教会の堕落から終末に到るとされる「1年と2年と半年」の期間を、3年半と解釈して1260日となり、それを現実世界の1260年に読み替える。ニュートンは教会が堕落したのは西暦800年であると特定しており、そこから1260年年後の西暦2060年まではハルマゲドンは起きないと導き出しているのである。
「獣は王国の年月に代えて置かれており、1260日という期間は、紀元800年から数えると紀元2060年に終わることになる。もっと遅く終わるかもしれないが、もっと早く終わる理由は見当たらない」(遺稿より)
同様に、これもおそらく人に見られたくなかった遺稿だと思われるが、ニュートンは次のような興味深いメモも遺している。
「私がこれに言及するのは、終わりの時がいつであるかを主張するためではなく、神聖な預言の信用を失墜させる空想的な人々の軽率な憶測を止めるためです。彼らの予言は外れるからです」(遺稿より)
有名なノストラダムスの『予言集(百詩篇)』が刊行されたのは1555年で、1999年にやって来る“恐怖の大王”について人々が知るところとなったのだが、その後のニュートンが生きた時代にも“世界の終わり”をもっともらしく予言する者が少なくなかったのだろう。
その類の“輩”を嫌っていたニュートンは、おそらく周囲に聖書について詳しく解説し、ある種の余興として自分ならではの“世界の終わり”を聖書に基づいて割り出して見せたということのようにも思える。
そこには「少なくとも2060年まではこの世界は終わらないので妙な噂に迷わされるな」というメッセージが込められていたのだ。
繰り返すが、ニュートン予言とはすなわち「2060年に世界が終わる」ではなく、「少なくとも2060年までに世界が終わることはない」と伝えるものだといえる。
これがニュートンと同じ時代を生きた人にとっては「まだまだ先の話だから大丈夫」と安心できる要素になり得たのかもしれないが、2023年を生きる私たちにとっては、もうすぐ猶予期間の終わりが近づいていることを(不安定な世界情勢もあって)否応なく実感させるものだ。核戦争、気候変動、災害、AI、疫病――と現状でも世界の破滅に繋がりそうなトピックは数多く存在するが、果たして……。
ノストラダムスの予言やマヤ歴のように、このニュートン予言も盛大に外れてくれることを祈るしかないが、ただし、もし外れているとしたら「2060年以前の終末到来もあり得る」ことにもなってしまうではないか! 歴史上の大科学者はなかなか厄介なメモを遺してくれたものである。
【参考】
https://www.iflscience.com/why-isaac-newton-predicted-the-world-would-end-in-2060-68590
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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