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中国戦国時代の楚地方に伝わる『楚辞』は、中国南方文化を代表する古典文学。この『楚辞』の"天問篇"には、有名な"射日神話"が収録されている。それによると、かつて古代中国ではなんと天に太陽が10個もあったという。暑すぎるどころか万物は太陽光線により焼尽するほかない。そこで羿(げい)という弓の達人が、9個の太陽を射落として世界を焦熱から救った、という。だから現在は太陽がひとつしかないのである。
北欧、北米から中東、東アジアなど、世界各地に広く伝承されるこうした射日神話をモチーフとしたのが、今回ご紹介する『九日 Nine Sols』。SFと古代中国神話を融合させた世界で2Dのメトロイドヴァニアスタイルの探索とアクションを堪能できる本作で、あなたは、まさしくこの"羿"となり、9人の太陽人を討つべく冒険することになる。
敵の攻撃はすべて"パリィ"で弾き、すかさず"呪符"を貼りつけて印を結び、呪力を爆発させてとどめを刺す。まさに道士のような一風変わった呪術アクションをはじめ、羿の名にふさわしい霊の弓矢や霊剣を駆使したスピード感溢れるバトルは、近年最高峰と呼んでもいいほどスリリングかつカタルシスに満ちている極上の仕上がり。

しかし、やはりムー民の皆様には、かつてないほどに古代中国神話の世界観を取り入れつつ、SFに昇華させている唯一無二の世界観設定、シナリオ、そして全編にわたる道教思想こそをおすすめしたいところ。古代中国の射日神話で登場した、皇帝の息子たちである太陽の10兄弟は、そのまま超技術を発展させて栄華を誇った、猫のような姿の"太陽人"として登場するが、そのイメージソースとなっている太陽10兄弟は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸と、干支の十干の由来になっていたりする。また、羿が射落とした太陽を運んでいた鳥は三本足であり、まさに日本の太陽を象徴する"八咫烏"のルーツにほかならない。
『九日 Nine Sols』は、台湾で『返校』など文化背景や神話伝承を丹念に真摯に織り込んだホラーゲームを手掛けてきたREDCANDLE GAMESの最新作。それだけに、ゲーム業界広しといえども、雄大かつ深淵な中国神話の世界をここまで体感できる作品は稀有なものだ。少々難度は高めなものの、リトライが苦ではなく、むしろ病みつきになるほどの楽しさであり、リトライを繰り返すうちに、あなたはきっと、生と死は陰陽対極のごとく流転することさえも知らず知らずのうちに体感できる。"TAOパンク"の名に恥じない傑作といえるだろう。

(本作のムー民度 ★★★★☆)
Steam 配信中 3,400円
(月刊ムー2024年8月号)
藤川Q
ファミ通の怪人編集者。妖怪・オカルト担当という謎のポジションで、ムーにも協力。
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