「911犠牲者の生まれ変わり」が追悼施設を訪問してわかった衝撃の事実とは? 今週のムー的ミステリーニュース7選
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ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々(ようかいほいほい)」! 今回は、「歌をうたう妖怪」に焦点をあてて補遺々々します。 (2020年3月11日記事)
たまに大声で歌うと、とても気持ちの良いものです。
ご存じでしょうか。歌はヒトだけのものではない。妖怪や幽霊も歌をうたうのです。
お化けの歌なんて、そんな陰気くさいものは聞きたくない? 逆に暗い気持ちになる?
いやいや、これがなかなかの歌唱力と、きれいな歌声をもっているのですよ。
今回は抜群な歌唱力をもつ妖怪たちをご紹介いたします。
まずは、小さな合唱団。
ーー昔、あるところに「化け物が出る」と噂される寺がありました。
「そんな化け物は、この俺が退治してやる」
例のごとく、元気なひとりの村人が、臆することなくいい放ちます。
夜が更けるのを寺で待っていますと、どこからともなく、歌が聞こえてきました。
「オデグニコテグハリマノクニノハッテングエドコチャグマサヒゲサシタホイホイホイヒデゲダンゴツツトシタ」
きれいな声で、よくわからない歌を繰り返しうたっています。
それも1匹ではなく、いっぱい来るような気がしました。
そこで村人は大きな袋を準備し、その中に焼(焼餅?)をたくさん入れて袋の口をひろげておき、隠れて様子をうかがいます。
歌声はどんどん近くなり、小さな化け物が数珠繋ぎになってゾロゾロとやってきました。
化け物たちは鼻をフカフカとさせると、
「オデグニコテグハリマノクニノハッテングエドコチャグマサヒゲサシタホイホイホイヒデゲダンゴツツトシタホイホイ」と歌いながら、袋の中へと入っていきます。
すると隠れていた村人は飛びだし、すぐに袋の口を閉めました。
袋の中を見ると、ねずみがいっぱい入っています。
小さな化け物どもの正体は、このねずみたちだったのです。
すべてのねずみを退治すると、もうこの寺に化け物は出なくなりました。
ねずみも年をとると【ねずみのばけもの】になる、というお話です。
歌うのは、ねずみだけではありません。
彼らの天敵、猫だって化ければ歌います。
次は宮城県に伝わる、ちょっと怖いお話です。
その家では、1匹の年老いた猫を飼っていました。
ある日、お婆さんが家にひとりでいるとき、この古猫が話しかけてきたのです。
「面白い歌をうたって聞かせてやる。でも、だれにもこのことを告げるなよ」
そう釘を刺されてから聞かされた、古猫の歌。これが、本当に面白い。
あまりに面白かったので、お婆さんは我慢ができません。
家の人が帰ってくると、このことを話してしまったのです。
その数日後、お婆さんは死んでしまいました。
諸事情により詳しい地名は伏せますが、沖縄県の某島に「歌う魔物」が伝わっています。
この島の付近には20個以上の無人の小島があり、その中のひとつ(以下、C島とします)には、とても古い墓があります。このC島では、夜半になると歌声や三味線の音色が聞こえてくるといわれていました。
人々はこれを【ウタマジムン(歌をうたう魔物)】、そう呼んで怖がっていたそうです。
昔は若い男女が外で夜遊びすることを禁じていたので、こういう小島へこっそり遊びに行っていました。とくにC島は陸地に近いので行きやすい場所でしたが、ここで遊びたいのならば、ひとつのルールを守る必要があります。
沖縄の古典民謡である「柳(やなじ)」と「天川(あまかわ)」、この2曲を歌いこなせなければ、歌をうたうことも三味線を弾くこともしてはいけないのです。なぜなら、この島にある古い墓には、歌と三味線の名人が葬られており、その方よりも上手に歌をうたい、三味線を弾けなければ、シー(魂)をとられてしまうからです。
そういう理由もあって、若者たちはCへは行きたがらなかったといいます。
次のお話は、戦後間もないころ、このCで起きた出来事です。
C島は魚がたくさん集まる場所で、夜になると漁師がよく網をうちにきました。
ある晩、ダンパチウンチュウという漁師が魚を獲りにきました。
彼はウタマジムンのことは、まったく気にしていませんでした。昔から、「漁師にマジムンはつかない」といわれているからです。
すると、彼の耳は、それをとらえてしまいます。
「あー」
――声です。
それは、人などいるはずのない暗い岩場から聞こえてきました。
ダンパチウンチュウは網をその場に捨て、一目散に陸地へ逃げます。
そして、ジーキという海水調査のためのトンネルの付近で気絶してしまいました。
そこをたまたま通りかかった女性が彼を見つけ、「人が死んでいる!」と大騒ぎ。
砂糖水を飲ませてもらったダンパチウンチュウは息を吹き返し、こう語ったといいます。「ウタマジムンは本当にいた」
後日、彼は放り出した網をC島まで取りに行ったそうです。
貴重な昭和の妖怪体験談――といいたいところですが、ダンパチウンチュウの聞いた歌声は、妖怪のものではありません。
彼が歌声を聞いたそのとき、C島の東南部にある岩場には、歌の練習をしている人がいました。夜間なので迷惑にならないよう、ひと気のない場所を選んだのでしょう。ダンパチウンチュウはその人の発声練習の声を聞き、ウタマジムンだとかん違いし、逃げだしたのです。
なぜ、それが判明したのでしょうか。
実はC島で歌っていたのは、気絶した彼を助けた女性の息子だったのです。この話を聞いた息子、すぐに自分の声だとはいえませんでしたが、後日、酒を持参して事実に伝えにいったそうです。
それにしても、C島で歌の練習をするなんて……怖いもの知らずなのか、よほど歌に自身があったのでしょうか。

参考資料
専修大学風土研究同好会『轍』
『宮城県史21』民俗Ⅲ
南島研究会編『南島研究』27
黒史郎
作家、怪異蒐集家。1974年、神奈川県生まれ。2007年「夜は一緒に散歩 しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞してデビュー。実話怪談、怪奇文学などの著書多数。
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