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取材=松原タニシ 構成=高野勝久

超人ゆかりの祭りを追って、松原タニシは青森から奈良へ。日本の宗教史にも足跡を残すあの超人生誕の地に伝わる奇祭とは?
青森のグローバル超人スポット「キリストの墓」を訪ね、キリスト祭りでナニャドヤラ踊りに参加してきた松原タニシ。
ところで、この超人化計画でたびたび名前がでてくる日本史上トップクラスの超人といえば、この人、役小角(えんのおづぬ)。
今回は「超人の祭り」つながりということで、役小角ゆかりの祭りにもいってみた。場所は奈良県御所(ごせ)市の野口神社だ。
御所市は役小角がうまれた場所で、野口神社はその名も「蛇穴」という集落にある。ちょうど祭りは終わってしまったところだけど……境内の一角に、いたいた、これ。


これ、ヘビなのだ。
そしてこれが、みそ汁。ここの祭りでは、このみそ汁が重要なのだ。

祭りの名前は「汁かけ祭り」という。このおみそ汁を、参拝者にぶっかけるという祭りなのだ。70リットルのでっかいタンクいっぱいに入ったみそ汁を、参拝者や神社の前にいる人たちにぶっかけていくのだ。アツアツのやつを!
みそ汁の具はその年の当番のひとたちが自由に決めるのだが、ワカメはマスト。ワカメも70リットル分ともなるとこんな量になる。たけのこも必ず入れる決まりだとか。

祭りの本番では、ヘビは台の上に置かれ、そこから14メートルもの長い綱がのびて当番の人たちがそれを持って集落を練り歩く。そのため祭りは「蛇曳き汁かけ祭り」と呼ばれている。
では、どうしてヘビなのか。じつはこのヘビは、もとは村の娘だったのだ。
娘がヘビになってしまった理由。そこに役小角が関わってくる。今から1000年以上前、役小角はこの近くに生まれ、やがて葛城山という山に修行にいくようになる。山にいくとき毎日この神社あたりを通るのだが、村のある娘が若かりし小角さまをみて「あの修験者、かっこいい」となってしまう。

やがて娘は毎日小角さんに声をかけるようになるのだが、修行中の身である小角はもちろん無視。そのうちに娘は焦がれる想いからヘビと化し、口から火まで吐くようになってしまったのだ。

そしてある春、村人が田んぼの作業の休憩中にこの火を吐くヘビを発見。驚いて手に持っていたみそ汁をぶっかけるとヘビは井戸の中に逃げ込み、村人たちは総出で井戸を石で塞いでしまう。
そうやって村の娘を閉じ込めてしまって悪いことしたな……ということから始まったのが蛇曳き汁かけ祭りなのだという。ヘビになった娘を井戸に閉じ込めたのが旧暦の5月5日だったことから、祭りはいまでも5月5日に行われている(現在は新暦)。
源義経もアイヌの女性を泣かせて大陸に渡ったというし、超人はどこでも女を泣かせるらしい……。
女を泣かせた超人といえば、この鬼もそうだった。
今回は、さらにおまけ。

これは今中国の一部で人気だという食べ物ルオスーフェン。この黒いのはなんでしょう? ヒントは食べている男……そう、この黒い食材、タニシです。

ある超人をリスペクトして食べてみたのだけど、その超人とは、みんな大好き、あのムツゴロウさんだ。
ムツゴロウこと畑正憲さんといえば、ミミズ、コウモリ、ドブネズミ、オオサンショウウオなどなど、ゲテモノといわれるものを含めあらゆる食材を食べてきたことでも有名だが、そのムツゴロウさんが最後に食べたかったものがこれなのだそうだ。
といってもタニシということではない。ムツゴロウさんが最後に食べたかったのは、「自分」なのだそうだ。
ムツゴロウさんは中年の頃に胃を切除する手術を受けたことがあり、そのとき切除した胃を食べてみたいと医者に相談したところ当然却下。ところがそれを本に書いたところ、ある読者の少年から「ムツゴロウさんともあろう人がなぜ食べなかったのか、がっかりした」との感想が届いたのだそうだ。
それを読んだムツゴロウさんは、どうしてあのときもっと医者に食い下がらなかったのか……と後悔してしまう。それからは「死ぬまでに自分の肉を食べる」といっていたそうだが、残念ながら今年87歳でお亡くなりになる。希望が叶ったのかどうかはわからない。
そんな超人ムツゴロウさんに想いをいたしながら、タニシがタニシを食べてみました、という話でした。
竜飛の母ちゃんからはじまり、キリスト、役小角、ムツゴロウさんと、バラエティ豊かないろんな超人を追った超人化計画でした。
松原タニシ新刊「恐い食べ物」

松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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