火星文明はメガ津波で滅亡した!? 高さ250メートル巨大津波の痕跡が示す大異変/仲田しんじ
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超常現象の宝庫アメリカから、各州のミステリーを紹介。案内人は都市伝説研究家の宇佐和通! 目指せ全米制覇!
京都なら深泥池。東京なら青山墓地や谷中霊園。日本には、こうした場所を舞台に語られるいわゆる「タクシー怪談」と呼ばれるジャンルの話がある。タクシードライバーの実体験とう体で語られることがほとんどで、「目的地に着くと乗せた女性が姿を消し、バックシートがぐっしょり濡れていた」などの定型的な物語が進む。
同様にアメリカにも、車社会ならではのヒッチハイカーロア(ヒッチハイカーをモチーフにした話)が多数存在するのだが、中でも「消えるヒッチハイカー」という話は全米レベルで語られ続けている。

深夜に人通りの少ない道を一人で運転しているドライバーが、道端に立つ人影を見かける。スピードを落として近づいていくと、若い女性だった。かなり昔に流行ったタイプの服を着ている。辺りは真っ暗だったので、心配したドライバーは車に乗せることにする。
バックシートに座った彼女は、寒そうに震えていた。あまりに寒そうなので、ドライバーは助手席に置いておいたコートを貸す。「どこに行きたいの?」と訊ねると、彼女は小さな声で目的地を告げたまま、それ以上ひとことも発さない。ルームミラーで見ると、遠くを見るような表情を浮かべている。目的地に近づいたので振り返ると、バックシートに誰もいない。途中で一度も停まらなかったし、転げ落ちてしまったなら気がついたはずだ。
ドライバーは、とりあえず彼女に教えられた住所を訪れてみることにする。ドアをノックすると、おばあさんが出てきた。こういった服装の若い女性をここまで送ってきたと話すと、「それは○○年前の今夜、交通事故で亡くなった娘です」と答えが返ってくるのだった。
この話は、拡散が始まるとほぼ同時に細かいバリエーションが登場し、オチで「あの子は毎年命日になると家に帰ってくるんですよ」というひと言が加えられることもある。また、ドライバーが花を手向けに翌日女性の墓まで行ってみると、貸したコートが墓石にかけられているのを見つけるというバージョンもある。
ロンサムハイウェイ――ひと気のない寂しい道路――は、アメリカのどこの州にもある。「消えるヒッチハイカー」は場所が特定されていないからこそ拡散しやすかったともいえるのだが、最初から具体的な地名を盛り込んで語られていたのがアーカンソー州で広まったバージョンだ。
ハロウィーンの時期にアーカンソー州中央部のハイウェイ365号線を運転していると、白いボロボロのドレスを着た少女に遭遇することがある。友だちの友だちの彼氏がこの道路を走っていたとき、この少女を目撃した。車に乗せてバックシートに座らせたら、とても寒そうにしているので、自分が着ていたジャケットを肩にかけてあげた。どこに行くのか訊ねると、彼女はかろうじて聞き取れる声で行き先を告げた。
教えられた場所に到着すると、少女は跡形もなく消えていた。彼は車を降りて家のドアをノックすると、出てきた老女がこう言った。「その少女は私の娘で、何年も前に亡くなりました。毎年この時期になるとヒッチハイクで家に帰ってくるんです」。

ハイウェイ365号線というのは、アーカンソー州のウッドソンからレッドフィールドという都市周辺を走る道路だ。実際、ここを走るドライバーたちが白いドレスを着た若い女性を目撃したという報告が相次いだ時期があった。
アーカンソー州はアメリカ南部に位置し、クリスタルブリッジス・ミュージアム・オブ・アメリカンアートをはじめとする多様な文化遺産で知られる。「自然の州(The Natural State)」というニックネームのとおり、川・森林・山・温泉など美しく豊富な自然資源も魅力だ。他の州と比較して手つかずの状態のまま残されている場所が多く、それゆえ道路網によってカバーされている都市部が狭い。つまり、ロンサムハイウェイという表現がぴったりな道路が多くなる。
「消えるヒッチハイカー」の大きなテーマは、地縛霊あるいは残留思念といったもので、それが原因となって繰り返し起きる現象を多くの人たちが体験する。ハイウェイ365号沿いで命を落とした女性の悲しみと喪失感があまりにも強烈なため、空間に焼き付いてしまっているという解釈が一般的だ。
アーカンソー州の怪異に特化したFacebookページ『paranormal Arkansas』には、消えるヒッチハイカーに関する体験談が定期的にアップされている。このページの常連である地元のブロガー、フランキー・ブルックスは、独自の調査によって「消えるヒッチハイカー」の原点ともいうべき事故までたどり着いた。
彼の見解によれば、どうやら1940年代にウッドソンで若い男女が命を落とす事故があったようだ。1948年、アーカンソー矯正局職員が365号線で彼らの姿と車を目撃した。事故の後だったので、この時目撃されたのはすでに物質世界の存在ではなかったと考えられる。

その後も女性の目撃証言が複数あり、1980年になって、アーカンソー州警察がこの件についてかなり深い調査を行った。この調査は地元新聞で大々的に取り上げられ、1973年の映画『Encounter with the Unknown』でも触れられている。こうした一連のプロセスも、この話の原話バージョンがアーカンソー州内で起きた事故であるという意識づけにつながったといえるだろう。
こうしてハイウェイ365号は、有名な心霊スポットとして州内外で知られるようになった。全米レベルで拡散している「消えるヒッチハイカー」。アーカンソー州バージョンだけは、今もリアルタイムで進行する実話怪談として語られ続けている。
どの話を読んでも、日本のタクシー怪談とクロスオーバーする部分が多い。英語の“ホーンテッド(Haunted)”という言葉の語感は、“呪い”というよりも地縛霊的なもののニュアンスが強いように思う。アメリカの都市伝説に幽霊をフィーチャーしたものはそれほど多くないという実感があるのだが、少なくとも「消えるヒッチハイカー」のアーカンソー州バージョンは、原話と思える事件まで辿ることができる。しかも、どこか切ない幽霊話という意味で、独自のオーラを放ち続ける珍しいアーバン・フォークロアなのだ。
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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