幻の祝日「神武天皇御東征日」に改暦の混乱を見る! 紀元節を現代に位置付ける政策の痕跡/鹿角崇彦
2月11日は「建国記念の日」。明治時代、この祝日に代替しうる、とある記念日のプランが立案されていた。幻のオルタナティブ紀元節と、さらに幻に終わったある祝日案とは。
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都市伝説には元ネタがあった。恐怖と友情、強靭な勇気が織りなす物語がここにある。
昔からよく知られる都市伝説に、「友だちだよな」というタイトルで紹介されることが多い話がある。これは怪談の中で友情を確認するために発せられた印象的なセリフがそのまま使われているものだ。なぜそのような言葉を発することになったのかは、この都市伝説の内容を紹介することで説明しよう。
A、B、Cというある3人の男子大学生が居酒屋に集まり、飲み会をしていた。3人は高校時代からの友だち同士で、別々の大学に進学してからも定期的に会うほど仲がよかった。
次第に盛り上がってきた3人は、地元で有名な心霊スポットに行こうという話になった。運転手として酒を飲んでいなかったAが運転席に、残りのふたりは後部座席に座って、早速心霊スポットに向かった。
そこは古びたトンネルで、いかにもな雰囲気が漂っていたが、3人が車を降りて探索しても何か出るわけでもなかった。そのため、とりあえず写真だけ撮り、帰ろうということになって車に戻った。
しかし、車はいつまでたっても発進しない。不思議に思ったBとCが後部座席から運転席のAを見ると、夏にもかかわらず汗をびっしょりとかいて、青い顔をして震えている。
BとCが「どうしたんだよ」
「具合悪いのか」などと口々に心配すると、Aはふたりのほうを振り向いて、こういった。
「俺たちさ、友だちだよな? 何があっても俺を置いていかないよな?」
突然の質問に少し驚きながらも、BとCが「当たり前だろ」と答えると、Aはハンドルから右手を放し、自分の足もとを指しながらいった。
「じゃあさ、俺の足もとを見てくれないか……?」
その尋常ではない様子に、BとCが恐る恐るAの足もとをのぞき込むと、車の底から真っ白な腕が飛びだし、Aの足首をつかんでいるのが見えた。
BとCは思わず悲鳴を上げ、車を降りて逃げた。Aを置き去りにして……。
それからしばらくして、落ち着いたBとCが先ほどの場所に戻ってみると、そこにはもと通りAの車があったが、運転席からAの姿は消えていた。
それ以来、Aの行方はわかっていないという。
運転手の末路は車ごと行方不明になる、精神に異常をきたして入院する、ツタが多い心霊スポットに行き、運転手がツタに巻きつかれた状態で発見される、などバリエーションは多い。舞台は心霊スポットではなく、墓地とすることもある。
いずれにせよ、運転手に「友だちだよな」と確認を求められ、それを肯定したにもかかわらず、友人たちは正体不明の何者かが現れた恐怖からその存在に捕らえられ、動けなくなっている運転手を助けることができず、思わず見捨ててしまう、という展開は共通している。怪談を読む人々は見捨てられた運転手の絶望を想像し、語られない彼の末路に恐怖する。

そして近代の日本においてもこれに類似した話が語られているのが見える。ただし現代の都市伝説と大きく違うのは、運転手にあたる主人公の人物があまりにも強かったということだ。
高知県の郷土史家であった寺石正路が著し、1925年に刊行された『土佐風俗と伝説』には、現在の高知市に現存する潮江天満宮の裏手にあったという寺院、称名寺にまつわる話が載せられている。
それによれば、この寺の前に夜な夜な幽霊が出るという噂があった。そのため、山田某という者が朋友ふたりとともに幽霊の存在を確かめようとその寺へと赴いた。
夕方に寺前に着き、近くの小川にかかった橋に腰かけて夜まで待っていると、橋下の暗いところに怪しい者が現れ、化粧をしているように見えた。山田のふたりの朋友はこれを見て震え上がっていたが、今度は山田が「先ほどから冷ややかな手で橋下から俺の足をつかむ者がある」といったため、ふたりは驚いて先を争って逃げていってしまった。
山田はひとり残されたが、自分の足をつかむ手を逆につかんで引き上げた。すると、そこには白い着物を着た乱れ髪の女がやつれた姿でいたため、「あなたはどなたか。どんな理由があってここに来たのか」と問いかけた。
すると女は「私はこの近くに住む豆腐屋の何某の妻で、先日死んでしまったのですが、夫が迎えた後妻が邪慳な人間で、私が残してきた子どもを苦しめているため、ひとこと恨みをいおうと度々家に帰るも、門口に神仏の守り札が貼ってあって入ることができないのです。そのため、往来の人に頼んでその守り札を取り除いてほしいと思っていたのですが、会う人は皆逃げてしまってどうしようもありませんでした。どうか情けをいただき、願いを聞き入れて、その守り札を取り除いてください」と願った。
山田は「たやすいこと」と幽霊に同行し、その豆腐屋の門口に至ると守り札を引き剝がした。すると女の幽霊は大変に嬉しそうな顔をしてその門の中に向かったが、家幽霊が入るや否や女の叫び声が聞こえた。後に聞いたことによると、後妻は前妻の死霊に取り殺されたのだという。
現代の「友だちだよな」とは友人たちといわくつきのスポットに出かけて正体不明の何かに足をつかまれ、それを知った友人たちが逃げていくところまでは一致するが、山田某の場合、ひとつも幽霊を恐れることなく、それどころか幽霊を引きずり上げ、そのいい分を聞いて幽霊の復讐に協力までしてやっている。たとえ友人に裏切られたとしても、豪胆さと勇気をもち合わせていれば怪異を乗り越えられる、ということなのかもしれない。


(月刊ムー 2024年9月号)
朝里樹
1990年北海道生まれ。公務員として働くかたわら、在野で都市伝説の収集・研究を行う。
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