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呪物王国タイ発の呪物映画が本邦公開。「フンパヨン」というかわいい名前に隠された強力なパワーの実態を、呪物コレクター田中俊行が実体験を交えて解説!
映画の舞台はタイ。出家した兄を捜すため、古くからの因習が残る寺に辿り着いた青年タームと、この寺の暗部を見てきたであろう青年テを軸に、奇妙で無気味で不思議な物語が走る。その寺は島のなかにあり、外部との接触を遮断する。
この段階で自分としては「いい予感」がした。
予感のとおり、このふたりのゆく先に待ち受けるさまざまな災いにワクワクした。
映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』は、ホラーでありながらサスペンス要素もあり、呪物コレクターの自分も非常に深いコクを楽しめた作品だ。

僕は世界中の呪物を集めている。この映画の舞台となるタイは日本からも行きやすく仏教以前のアニミズムが色濃く残る国だ。
映画のもうひとつの主人公は呪物である。タイトルにもなっている「フンパヨン」とは、タイの呪物のなかでも最古のものともいわれる。「フン」とは「ヒトガタ」のことで、「パヨン」は「宿らせる」という意味からわかるように、まずは人の形をした依り代を作ることから始まる。素材は織り草や織り蔓、木、粘土、布、金属などさまざま。それを人の形にし、特殊な鍋で煮詰めた薬草や、ミントやユーカリの成分が含まれた霊油を塗りながらお経を唱え、生命を吹き込む──そうした呪術的手順により、フンパヨンは力を持ち、呪物となるのだ。
高僧や呪術師の修行で培った「心の力」が吹き込まれているため、フンパヨンを身につける持ち主は悪霊や悪い運命から遠ざけられ、幸運が舞い込むという。
フンパヨンは、両手に剣を持って立っている姿が伝統的ではあるが、昨今では、銃や手榴弾を持っている姿でも作られたりする。また映画のキャラクターなどを模したフンパヨンもあって、見た目はバラエティー豊かになっている。

フンパヨンの作者で特に有名なのがローイ先生だ。今は惜しくも亡くなっているが椰子系のラーンという木の枝から作られた「フンパヨン」は両手に武器を持っている伝統的な佇まいが素晴らしく、戦士の様に自分を守ってくれる頼もしさがある。自分も入手しようと捜しているが、なにしろ値段が高い! 小さいものでも60万円はする。第2世代といわれるローイ先生の弟子たちのフンパヨンが比較的、手に入りやすいだろう。


少し説明が長くなったが、僕もフンパヨンは古いものから新しいものまで10体ほど持っており、その呪術的な効果を実感している者のひとりだ。
そう、この映画に出てくる呪物は実在する。そればかりか、ここで簡単に紹介した作り方ではない、逸脱した最強のフンパヨンが中盤から現れる。闇の呪術師が欲望にまかせて作った非道徳なフンパヨンなのだが、それはもう本来のフンパヨンとは到底呼べない禍々しい霊的凶器となっていくのだが……。
それはもちろん、映画のなかのフィクション。
とはいえ、少なからずタイの呪物を現地で見て、その奥深さを知るべく必死で学んでいる身としては、タイ呪物文化の発展のなかで、呪力を高められたフンパヨンが誕生しないとはいいきれない。なにしろフンパヨンは引き継ぎ可能な呪物であり、効果(実績)のあるものを求める者が後を絶たないのだ。もっと強いものを、もっと、もっと……。
タイでは現在進行形でフンパヨンが作られ、必要とされている。この映画を観たら、あなたもフンパヨンがほしくなるだろう。


「フンパヨン 呪物に隠れた闇」
公開中/シネマート新宿ほか全国順次公開
監 督:ポンタリット・
チョーティグリッサダーソーポン(マイク)
キャスト:プーンパット・イアン=サマン(アップ)、プーウィン・タンサックユーン ほか
製作会社:ファイブスター・プロダクション
配 給:ギークピクチュアズ
上映時間:107分/2023年作品
© Five Star Production Co., Ltd. 2023
(月刊ムー 2024年8月号より)
田中俊行
オカルトコレクター。呪物や怪談、それらに準じるものを集め、ともに暮らす奇人。
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