高松・野田池の怪談とペガサス降臨の謎/松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎の怪談行脚
異色ユニットが、行く先々での怪奇体験を公開する。 今回は、四国の怪談を守る男・恐怖新聞健太郎が高松の心霊譚をお届け。ペガサスも舞い降りる?
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超常現象の宝庫アメリカから、各州のミステリーを紹介。案内人は都市伝説研究家の宇佐和通! 目指せ全米制覇!
“ナイトマーチャーズ” (Night Marchers)という言葉をご存知だろうか。文字通り“夜に行進する者たち”という意味で、ハワイの伝承で語られる超自然的存在の呼び名だ。古代ハワイ王朝の戦士の霊であり、今でも姿が目撃されることが多いという。実際の体験談も報告されていたものの、都市伝説的な響きの話というレベルでしかなかった。
しかし今年、2024年の1月、とある映像がSNSでアップされ、世界レベルで拡散することになった。

話の主役は、ケイ・ボーレイスという女性トレイルランナーだ。彼女は、2019年にオアフ島で行われたハワイアン・ウルトラ・ランニング・チームのトレイル100マイル耐久ランに参加した。10代前半から本格的にトレイルランに取り組んできたボーレイスは、レース中は頭を下げて走ることにしていた。
このランナーとしてのルーティーンのせいで知らず知らずのうちにナイトマーチャーの領域に足を踏み入れ、そして命が助かったのかもしれない。
この大会は太い木の根や水路の横断など障害物が多い設定で、かなり過酷だった。レースの中盤、すべりやすい芝生の部分を通り抜けようとしたとき、わずかな油断から足を負傷してしまった。その後痛みがひどくなったためにレースを中止し、友人や家族が待機していた宿泊先に戻らざるをえなくなった。けがの手当てを終えた彼女は、レース中ずっとペースメーカーとして同行していた友人のキャシーが撮影した画像を見ながら、レースを振り返ることにした。
写真をスクロールしているうち、とあるライブフォトに「マントのようなものをまとった奇妙な人物」が写っているのに気づいた。全身が灰色で、映画で見るゾンビにそっくりだ。何とも形容しがたい表情をしている。映像には、その人物が木の陰から現れ、ボーレイスの横を通り過ぎるまでが映っているが、彼女自身は周囲に誰かがいたことは覚えていなかった。
気味が悪かったので、自らさまざま調べてみることにした。その過程で見つけたのがナイトマーチャーの伝説だ。
文献には、「戦士の霊で、人々を守るために夜中に旅をするといわれているが、あまりに神聖なため、誰も姿を見ることは許されない」という文章があった。あえて見ようとした者には、死が訪れる。ナイトマーチャーに遭遇した場合は決して直視せず、うつ伏せになり、敬意を示すことが重要だ。こうすれば彼らの怒りを買うことはない。
ずっと下を見たまま走っていたボーレイスは、すぐ近くに現れたナイトマーチャーの姿を直接見ずに済んだようだ。
ナイトマーチャーの伝説は今も、ハワイ文化の重要な一部としてリスペクトされている。
伝承によれば、ナイトマーチャーは、死後もなお古代の戦士としての使命を果たすために行進を続けている。彼らは特定の夜に現れ、特定のルートを通るといわれている。肉体を持って生きていたときに実際に行進した祭祀場や古戦場だ。笛や太鼓の音を出しながら、松明を持って行進するルートには、神聖な場所や歴史的な遺跡が含まれることもしばしばある。
観光客が多いオアフ島でも、あちこちにヘイアウと呼ばれる古代ハワイ民族の祭祀場の遺跡がある。

ヘイアウという祭祀場の遺跡は手つかずの状態で自然の中にあるが、周囲は開発が進んで住宅街や商業施設に隣接していることも珍しくない。
過去に王朝が存在していたハワイは、他の州と比べてずば抜けて歴史が古い。“ならでは”という逸話も少なくない。
ハワイ神話をベースにした都市伝説的な話も紹介しておく。
オアフ島やマウイ島、そしてハワイ島の都市部で、“真っ赤な髪の毛の女性”が目撃されることがある。赤毛などというレベルではなく、ぼうっとした質感の光を放ちながら燃え立つような赤さだという。ほとんどの目撃例は、真夜中過ぎから明け方に集中している。
この女性は、ハワイ神話に出てくる火山の女神ペレの化身であるといわれている。ポリネシア神話体系につながる神格で、特にハワイでの信仰が厚かった。ペレはそもそもタヒチで生まれた女神だが、海を渡ってハワイ島にあるキラウエア火山のハレマウマウ火口にたどり着いた。それ以来、キラウエア火山を見守っている。
ちなみに、旅の途中でオアフ島南東部にあるマカプウ岬でひと休みし、そこからマウイ島を経由してハワイ島まで行ったといわれているが、そのときに腰を下ろしたペレの椅子という岩がある。

特徴的な形状のこの岩は、オアフ島で有名なパワースポットのひとつとして知られており、捧げものとして置かれるレイが常に飾られている。
真っ赤な髪の女性の話は、ローカルそしてごく一部の旅行者に限られた体験談として拡散している。ナイトマーチャーとちがい、こちらは遭遇してしまったとしても特に悪いことは起こらないようだ。想像に難くないが、女性の姿を見た者は言葉にできない畏怖の念に打たれるという。
国家としての歴史が比較的短いアメリカでも、ハワイでは古代文明とのつながりを感じさせる話がいまも語り継がれている。こうしたテイストの話が、アメリカのポップカルチャーの中で独自の存在感を示している事実は興味深い。
「自分たちはハワイ王国民である」という意識を強く持つ人たちがいまだに多いハワイでは、ナイトマーチャーとペレの化身の話を媒体として、ハワイ王国の文化的アイデンティティが長く生き続けていくのだろう。

宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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