墓石を身に着けた奇妙な人、墓石を磨く祈り人……怪異として語られた人たち/妖怪補遺々々
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加門七海 監修
最強の呪術使いである陰陽師・安倍晴明と、日本史における呪術の世界を詳細に解説
1980年代の、夢枕獏氏の小説『陰陽師』シリーズに端を発する〈陰陽師ブーム〉。小説のみにとどまらず、漫画や舞台、ドラマに映画と、ブームはその媒体の幅を広げつつ、今なお根強く続いている。本稿執筆時点でも、山崎賢人が主人公・安倍晴明を演ずる映画『陰陽師0』が絶賛公開中である。
そんなフィクションに登場する陰陽師・安倍晴明は、自在に「式神」を使役し、派手な呪術を用いてさまざまな悪と対決する、スーパーヒーローとして描かれる。
だが当然、そんな超人的な安倍晴明像は、後世の神格化の結果であり、史実の晴明とはいささか異なっている。
本書では、文献資料に見る安倍晴明の実像を明らかにするとともに、その神格化の過程を、丹念に辿ってゆく。
さらに、晴明を殺害(その後、復活)したとされる陰陽師・蘆屋道満や、晴明に呪術戦を仕掛けて敗北し、その後彼の弟子となる法師陰陽師の智徳、そして晴明の師であった大陰陽師・賀茂保憲など、晴明のライバルともいうべき陰陽師たちが紹介されたあと、いよいよ本書は佳境を迎える。標題にもある、「日本史」の闇の部分で脈動を続けてきた、広大深淵な呪術の世界が、古くは縄文時代にまでさかのぼって、詳細に解説されるのだ。
これを見れば、いかにこの日本という国の歴史が、さまざまな呪術と密接不可分なものであったかが、まざまざと実感できよう。
最後に、陰陽道の原理と実践の方法、さらには現代にまで続く陰陽道の伝統が紹介される。何と、今も神社で頒布される「暦」や、朝の情報番組の「今日の占い」までもが、いにしえよりの、呪術の伝統の流れを汲んでいるというのだ。
本書の監修者である加門七海氏は、いわずと知れたオカルト、風水、民俗学などに造詣の深い作家。先述の映画『陰陽師0』でも「呪術監修」を務めている呪術界のオーソリティで、先般の本欄でも、氏の『呪術講座 入門編』(KADOKAWA)をご紹介した。
本書はそんな氏の監修本であるから、内容については、文字通りのお墨付き。映画や小説をきっかけに、晴明や陰陽道に関心を抱いたという人にとって、格好の参考書の役割を果たしてくれるだろう。

(月刊ムー 2024年7月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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