尋常ではない数の“ミニ石祠”に秘められた人々の念とは? 千葉の「道祖神」密集地帯を行く!
この道25年、すべてを知る男による全国屈指の珍スポット紹介! 今回は千葉県北部の道祖神。尋常ではない数の石祠が奉納された驚異的光景の背景にある人々の思いとは?
記事を読む

ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪遺々々」! 今回は、〝祟りで村を焼き尽くす大きな鯉〟を補遺々々します。 (2020年2月12日 記事)
山で見つけたカラフルなキノコ。未開の地で出された異形の魚の刺身。
世の中には、食べてはいけないものがたくさんあります。
それらを食べてどうなっても自己責任。覚悟がおありならチャレンジするのもいいですが、想像もしていなかった代償を払うことになるかもしれません。
京都府京丹後市久美浜町海士に【赤池】と呼ばれる池があります。
ここにも、食べてはいけないものが棲んでいました。
これは天文年間の出来事です。
ふたりの六部が海士の村にやってきました。13歳の左近という者と、その母親です。
親子が池の付近を通ったとき、突然、母親に異変が起きました。
急な病によって倒れてしまったのです。
その後、海士の人たちによって介抱を受け、左近も懸命に母親を看病しましたが、病状は思わしくありません。これでは廻国など無理です。
そんなときでした。
「鯉の刺身が食べたい……鯉の刺身が食べたい」
母親がしきりにそういいだしたのです。
鯉を食べたら元気になってくれるかもしれません。なんとか母親の願いを叶えてあげたい左近は、池に行って3尺ほどの大きな鯉を捕まえてきました。
ところが、母親は鯉を口にすることなく、死んでしまったのです。
そして左近もまた、その驚きと悲しみで気を失い、そのまま死んでしまいました。
海士の村人たちは「大鯉の祟りに違いない」と、池に鯉を放します。
すると、池の水が真っ赤になっていくではありませんか。
それ以来、ここは赤池と呼ばれるようになったのだそうです。
この大鯉と同じものかはわかりませんが、赤池には主がいるといわれていました。【鯉右衛門(こいうえもん)】と呼ばれている大鯉です。
これも昔むかしのお話です。
ある日のこと、海士の村人が赤池にやってきて、なにやらセッセと作業を始めました。
魚を獲るため、池の水を替え出そうというのです。
セッセ、セッセと水替えをしていますと――。
「あ、あれは……?」
村人は呆然としました。海士の村のほうで煙が上がっているのです。
どうやら、村で火事が起きているようです。
その火は見る見る広がっていき、大火事へとなっていきます。
ーー大変だ!
村人は慌てて海士の村へ走ります。
ところが、村に帰ってみますと――これはどうしたことでしょう?
不思議なことに、村では火事など起こっていません。1本の煙も昇っていないのです。
「なあんだ、狐狸の仕業か」
村人はすぐに引き返し、池の水替えを再開します。
するとまた、村のほうで煙が立ちのぼり、火が出て、大火事になっていきます。
ーーもう、だまされないぞ。かまわずに水替え作業を続けます。
やがて、日が暮れて、池の魚をたくさん獲った村人は村へと帰ります。
そこには、信じられない光景が広がっていました。
海士の村が、焼け野原になっていたのです。
人々は鯉右衛門の祟りだといって怖れたそうです。
赤池の名の由来は諸説あり、朱壺を洗った水が流れてきたので水が赤くなり、赤池と呼ぶようになったという説、坂井城の殿様・赤井家の所有地なので「赤井の池」が約まって「赤池」になったという説があります。
海士の人々は、赤池と俵野の「丹池」とは底が続いて繋がっていると信じており、俵野の「丹池」に棒を投げ入れたら、数日後に海士の赤池から浮かび出てきたといい伝えています。
参考資料
井上正一『ふるさとのむかし ―伝説と史話―』
井上正一「奥丹後物語 草稿」『季刊 民話』創刊号

黒史郎
作家、怪異蒐集家。1974年、神奈川県生まれ。2007年「夜は一緒に散歩 しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞してデビュー。実話怪談、怪奇文学などの著書多数。
関連記事
尋常ではない数の“ミニ石祠”に秘められた人々の念とは? 千葉の「道祖神」密集地帯を行く!
この道25年、すべてを知る男による全国屈指の珍スポット紹介! 今回は千葉県北部の道祖神。尋常ではない数の石祠が奉納された驚異的光景の背景にある人々の思いとは?
記事を読む
「南極のゴジラ」との遭遇ーーその前日譚の”幼生体”の謎/妖怪補遺々々
かつて南極観測隊が、航海の最中に目撃したものとは…… ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」だ!
記事を読む
俳優、アーティスト、『バチェラー・ジャパン』司会…坂東工のミラクルな半生はモリヤの祖霊が導いていた!/辛酸なめ子
『バチェラー・ジャパン』の司会進行、俳優、アーティストなどの顔を持つ坂東工氏は、物部守屋の末裔! 先祖が導く数奇な半生を聞き出した。
記事を読む
赤ちゃんに唾を吐き、新郎新婦に排泄を禁じ、少女に鍋を被せ…! 話題の古書店主が語る世界各地の奇祭
いま密かに話題の古書店「書肆ゲンシシャ」の店主・藤井慎二氏が、同店の所蔵する珍奇で奇妙なコレクションの数々を紹介!
記事を読む
おすすめ記事