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及川祥平 著
「空間を〈心霊スポット〉化する想像力」とは
この標題を見れば、だれもが心霊関係の本と思うだろうが、さにあらず。本書は、至極生真面目な民俗学の研究書、というより論文である。
心霊スポットに「恐ろしげな物語を想像する人間の営み」「そうした場所への興味関心を包摂する〈私たち〉の生きるこの世のあり方、世相のあり方」を考察することが本書の目的であり、まさしく本書は「民俗学の伝説研究を現代社会の現象にまで拡張する試み」なのだ。
著者の及川祥平氏は、少壮の民俗学者で、成城大学准教授。人神祭祀や偉人顕彰の研究を専らとする。
学術論文であるから、参考文献の取り扱いも極めて厳密であり、内容の信頼性はこの上ない。
そのように真摯な学問的姿勢で、かつて惨殺事件が起きたとされる場所や、「首なし地蔵」伝説で知られる八王子の「道了堂」、大手町の「将門塚」、怪異の頻発する「八王子城跡」、惨たらしい伝承を持つ山梨県の「おむつ塚」などが分析され、「空間を〈心霊スポット〉化する想像力」のメカニズムが炙り出される。これは、刺さる人には非常に刺さるだろう。
本書は、本誌読者のような人(心霊や怪異に関心のある人)が、民俗学の真髄に触れるための、好個の題材である。
何しろ著者によれば、民俗学とは「人びとが学問を通して自ら知り、自己内部や眼前の社会に存在する諸課題を解決するための学問」。これに触れぬ手はない。

(2023年10月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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