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昭和の子供たちに絶大なトラウマを与えた、あまりに異形な一枚の「亡霊画」。その現物が青森県のギャラリーで保管、公開されていた!
弘前市のギャラリー森山で毎夏開催されている「ゆうれい展」。青森各地の寺院から借り受けた大量の幽霊画、血なまぐさいねぷた絵など怪談めいた美術作品が一堂に会している。
本展示の目玉としてよく言及されるのは弘前市・正伝寺の「渡邊金三郎断首図」だが、あの伝説のオカルト・アートも忘れてはならない。
それは「昭和27年、大高博士をおそったほんものの亡霊」だ。
説明しておこう。大高興博士は青森県の高名な医師。
1952年8月20日、若き大高博士が恩師や友人らとむつ市に遊びにきていたときのこと。仲間の病院に一泊させてもらったところ、午前3時半ころ、廊下からだれかが話しかけてきたという。
「寒いんです……とても寒いんです」
それならお入りなさい、と答える大高博士。するとドアから足音が響き、ベッドで上体を起こしていた大高博士の左脇腹に、ひどく冷たいなにかが飛び込んできた。
「こらっ!」と叫び、大高博士が左脇を見下ろすと。そこにいたのは、大きな目と口をひんむき、首にあいた穴から血を垂れ流す異形の存在だった……。
大高博士は後に、自身が視たものを克明なデッサン画にて描き残している。問題は、その図版が『わたしは幽霊を見た』(村松定孝 講談社、1972年)という子ども向け教育図書に掲載されてしまったことだ。1ページまるごとを使った大迫力の幽霊像は、なにげなく本を開いた当時の少年少女たちに大きなトラウマを与えてしまった。
その原画が「ゆうれい展」で展示されているというのだから、ぜひとも見ないわけにはいかない。
明るく広々とした1階ギャラリーとうってかわって、薄闇につつまれた2階展示室。ガラスの向こうから禍々しいオーラを放っているのは、紛れもなく大高博士のあのスケッチではないか。やはり原画の迫力はすごい。お世辞にも高級な印刷とはいえない『わたしは幽霊を見た』や、モノクロでコントラスト強めな『津軽霊界下界』(大高興 北の街出版、1974年)の図版とは細部の明瞭さがまったく違う。鉛筆デッサンでなんとか「亡霊」の質感を再現しようとした、大高博士の執念が窺えるのだ。


なぜこのような作品群を展示するにいたったのか、ギャラリー森山館長の森山豊さんに話を伺った。
「私の姉が正伝寺さんに嫁いだ関係で、お寺の幽霊画などをこちらで引き受けたりしていたんです。その流れで、蘭繁之さんの主催する〝お化けを守る会〟との関わりもありましたので」
〝お化けを守る会〟といえば平野威馬雄が主宰した往年の怪談サークルだ。水木しげる、横尾忠則、そして平野の義理の息子である和田誠といった錚々たる顔ぶれが参加していた。その弘前支部といったかたちで、当地にも〝お化けを守る会〟を発足させたのが蘭繁之。多彩な文化人で、特に「緑の笛豆本」シリーズなど膨大な豆本の刊行活動が有名である。
同会には大高博士も積極的に参加しており、その縁で博士の死後、遺族から例のデッサン画を譲り受けたのだという。
「蘭繁之さんが(2008年に)お亡くなりになった際、そちらのコレクションも引き継がせてもらいました」
オカルトマニアをうならせる展示物の数々。もはや弘前の夏の風物詩ともいえる「ゆうれい展」、また来夏に訪れてもらいたい。




ギャラリー森山
青森県弘前市樹木2丁目20-2。
ホームページ:http://www.applehs.co.jp/
(※今年の「ゆうれい展」会期は終了)
月刊ムー2023年10月号より
吉田悠軌
怪談・オカルト研究家。1980年、東京都生まれ。怪談サークル「とうもろこしの会」の会長をつとめ、 オカルトや怪談の現場および資料研究をライフワークとする。
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