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近い将来、人間の脳細胞で動く「バイオコンピュータ」が普及する可能性が高まってきたという。人間の存在そのものを変容させる可能性がある画期的技術の詳細とは?
ジョンズ・ホプキンス大学のトーマス・ハータング教授率いる研究チームによって、人間の脳細胞を原動力とするバイオコンピュータが、そう遠くない将来に開発される可能性が高くなってきた。このタイプのコンピュータが完成すれば、コンピュータサイエンス分野全般が飛躍的に進化することになる。
起業家イーロン・マスクが経営するニューラリンク社は、コンピュータ経由で脳とクラウドを直接つなげるテクノロジーを開発したが、ハータング教授のアプローチはそれと大きく異なる。イメージでいえば、脳の中にスーパーコンピュータを設置するようなテクノロジーなのだ。

倫理的な見地から、これまでは人間の臓器そのものを使った実験や検証はいかなる目的であっても不可能だった。そこでジョンズ・ホプキンス大学のチームは、幹細胞から作った脳のオルガノイド――学習や記憶といった脳の基本的機能を備える――を使うことで研究を加速度的に進歩させた。
「脳オルガノイドによって倫理面がクリアされ、脳の働きに関する研究の可能性が大きく花開いた。脳というシステムの働きをコントロールする方法を解き明かす、第一歩となった」(ハータング教授)
従来のコンピュータはエネルギー問題を抱えていた。たとえば、米ケンタッキー州にあるフロンティアというスーパーコンピュータは、6億ドルをかけて作った巨大装置にもかかわらず、昨年ようやく人間の脳細胞ひとつの計算能力を上回ることに成功したに過ぎない。しかも、脳細胞と比べて何百万倍ものエネルギーを消費する。
ところが、生物学的ハードウェアで動くバイオコンピュータは、このエネルギー消費問題を意にも介さない。処理能力の進化、データ効率の向上、記憶容量の飛躍的増加などにより、これまでの問題をすべて解決してしまう可能性があるという。そして、もちろんそのバイオコンピュータには、今よりも遥かに進化したAIも含まれる。

賛否両論はさまざまあるだろうが、現状におけるAIの加速度的な普及と、その限界について考えると、バイオコンピューティングが普及するのにそれほど時間を要しないかもしれない。
「AIによるテクノロジー革命が起こっているが、現状では限界が見えつつある。バイオコンピューティングとの組み合わせは、現状の技術的限界を打破する決定的な要因になるだろう」(ハータング教授)
バイオコンピューティングについて論文を読むと、まさに革新的なテクノロジーの話そのものだ。その一方で、この技術について知れば知るほど『ドクター・モローの島』のようなサイエンス・ホラー小説めいた話にも思えてくる。外見がどうなるとか、そんなレベルの話ではない。存在そのものが、もはや人間とは呼べないバイオコンピュータという生体機械になるのだ。これを進化と呼べるだろうか。

AIが人間の知能を超えるシンギュラリティが訪れるのは2045年といわれている。今、AIによって奪われると言われている多くの仕事が指摘されているが、このジャンルのテクノロジーは人間の脳まで侵略してしまう可能性をはらんでいる。何より恐ろしいのは、誰もわからない結末に向かって突っ走っているテクノロジーを、誰も止めようとしていないことではないだろうか。
【参考】
https://www.sciencedaily.com/releases/2023/02/230228075739.htm
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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