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身近な天体でありながら「月」の根本的なことも人類は知りえていない。
地球の唯一の衛星である月――。その月は、いつ誕生したのか、そして、どうやって地球の衛星になり得たのかも、まったくわかっていない謎の天体である。そんな月の起源については、古くから3つの仮説が立てられていた。
ひとつは「親子説(分裂説)」。地球が誕生する時に一部が分裂し、月となったというものである。ふたつ目は「兄弟説(集積説)」。これは地球が誕生した同じ時期に同じ場所で、月も誕生したというものである。最後は「他人説(捕獲説)」で、宇宙の別の空間からやってきた遊星を、地球の引力が引き寄せて衛星化したというものだ。

しかし、アポロ計画で採取した月の石を調べたところ、とんでもないことがわかった! 月の地表にあった石の年齢が、地球誕生よりも遙かに古い時代のものだったのだ(詳しくは22ページからの「月の石」で言及する)。このデータにより、月は地球誕生より以前から宇宙に存在していたということがわかったのである。つまり「親子説」「兄弟説」は成り立たない。
残った「他人説」だが、これも確証にはほど遠い。地球誕生以前に、宇宙のどこかで誕生し浮遊していた月(となる天体)が、ふらりと太陽系に現れて地球の引力に吸い寄せられ、衛星となるという確率は、広大な宇宙においてはゼロに等しい。また、地球にとって、月は「大きすぎる衛星」だ。地球の4分の1もある天体を、衛星として捕獲することは天文学的にありえない。
そこで近年、有力視されているのが第4の説、「ジャイアント・インパクト説」だ。これは、地球ができたばかりのころ、火星ほどの大きさの天体が衝突。粉砕された天体と地球の衝突片が、地球の軌道上を周回するうちに集まり、凝縮されて月が誕生したというものである。確かに整合性のある説だが……破片は、土星の環や小惑星帯のようになる可能性のほうが高いだろう。

つまり、月の誕生については、十分に納得できる完全な仮説はいまだに現れていないのである。
月は地球上のどの地点から見ても、同じ面しか見えない。なぜなら月は地球の周りを回っていると同時に、地球も月の周りを回っているからである。つまり、月の裏側は地球からは絶対に見えないのである。
では、月の裏側はどうなっているのか? 人類が初めて月の裏側を見たのは、1959年10月。旧ソ連(今のロシアなど)の月探査機「ルナ3号」が初めて月の裏側の様子を撮影した。その画像は不鮮明ではあったが、月の表側とは決定的な違いを写していた。裏側には「海」がほとんどなかったのである。
月の表側には「海」と呼ばれる、玄武岩で覆われた巨大な平原が多数ある。しかし裏側にはこの海はほとんど存在せず、代わりに「高地」と呼ばれる険しい地形が続いている。数限りないクレーターが乱立し、低地から見たときの標高は、数千メートルにも達するという。穏やかな顔を見せる表側に対し、月の裏側は険しく荒々しい地表なのである。


なぜこんなにも表と裏で地表に違いがあるのだろうか。裏側にだけ膨大な数の隕石が飛来したというのだろうか。この違いについてはいくつかの説はあるが、月の表裏の違いについて何も発見できていない、というのが現状である。
だが、裏側について判明していることもある。裏側の地殻は、表側よりも40~50キロメートルもぶ厚いのだ。つまり、裏側だけが異様に重い天体なのだ。月の内部構造を推定すると、月の質量は裏側に大きく偏った、洋なしのような形の天体になるはずなのだ。しかし、月は真円とはいわないが極端にいびつな形をしてはいない。なぜか。月の中心は、地球側に寄った場所にあるからだ。
小惑星ならまだしも、月ほどの大きな天体が奇妙すぎる内部構造を持ち、驚くべきバランスで地球の上を回っているというのだ。これは奇跡という言葉で片づけにくい。
月の調査は続いている。そしてまた、美しく輝く月の裏側にこそ、大いなる謎が隠されているのである。
地球から月を見上げると、“ウサギの餅つき”のような影模様が見てとれる。これは「海」と呼ばれている。昔の天文学者たちが、影の部分に海があると考えたのだ。

その後、月には大気も水も無いことが判明し、海という概念は消えた。では、この黒い影の部分が何なのかというと、太古の月で起きた大火山活動により溶岩があふれ、冷え固まった部分だという。
月で火山活動が起きていたのは、38億~31年億年前とされている。誕生当初、ドロドロに溶けていた月の表面が冷え固まり、地殻ができた。そして巨大な隕石の衝突により広大なクレーターができ、地下のマグマがクレーターの窪みに流れ出し、黒く冷え固まったのが海だという。
だがこれには大きな疑問がある。 月は内部の熱が宇宙空間に逃げやすい天体だ。月が誕生した直後は、表面は冷え固まって内部は灼熱のマグマが満たされていただろう。しかし、その後数億年もたたないうちに、月の内部も冷え固まったとされる。だとすると、溶岩の海(マグマ・オーシャン)を引き起こすほどのエネルギーが、月の内部に残っていないはずなのだ。
実は海の下には、衝突したニッケル小惑星が埋まっているのではないか、と研究者たちは予測する。衝突時の膨大なエネルギーが地中の冷えたマグマを溶かし、噴出させたのではないかといわれているが、まだ確証は得られていない。
1994年、アメリカの月探査機クレメンタインは、太陽系最大のクレーターを月の裏側で発見した。それは月の南半球のほとんど占める大きさで、直径2500キロメートル、深さ13キロメートルにも及ぶクレーターである。この発見は天文学会に大きな衝撃を与えた。これほど大きなクレーターを作りだした衝突で、月が破壊されなかったのはなぜか、さらにこの衝撃で軌道がずれなかったのか、という事実である。月の歴史は観測するほどに謎が深まっているのである。

並木伸一郎
「ムー」創刊当初から寄稿するベテランライター。UFO研究団体ICER日本代表、日本宇宙現象研究会(JSPS)会長などを兼任。ロズウェルやエリア51をはじめ現地調査を重ねて考察し、独自の仮説を「ムー」や自身のYouTubeなどで発表している。
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