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人智の及ばぬほど巨大な海棲生物「クラーケン」の基礎知識です。

クラーケンとは、北欧の伝承に登場する海の怪物である。
語源は北欧諸語で「不健康な生物」「捩れたもの」を意味するkrake。
伝承によれば、クラーケンは天地創造のときに生まれ、この世の終りまで生きつづける2匹の怪魚であるという。13世紀アイスランドのサガ『エルヴァル・オッド』に登場する2匹の海の怪物のうちの1匹、ハーヴ・グーヴァがクラーケンであったとする説もある。
古くからその存在は主として船乗りたちの間で知られてきたが、正体についてはまったく不明であった。
それが一気に人口に膾炙するようになったのは18世紀半ば、ノルウェーはベルゲンの司教エリーク・ポントピダンが、著書『ノルウェー博物誌』でこれを紹介したことを嚆矢とする。同書によればそれは体長1マイルに達し、海面近くまで浮上はしても、「人間の目ではその全貌を決して見ることはできない」、「一見したところ、小さな島々の集まりを想起させる。ぬらぬらした角あるいは突起物がいくつも現れ、時によるとそれらの突起物は中型船のマストと同じくらいに太くなる。それらはこの怪物の腕だろうと思われる」という。
さらにポントピダンによれば、クラーケンは香気を発して魚を引き寄せ、これを捕食する。捕食の際には何か月もの間、ひたすら捕食のみを続け、排泄は行なわない。逆に排泄の際には何か月も何も喰わずに排泄だけを続けるが、この排泄物もまた香気によって魚を惹きつけるという。
このことから船乗りにとっては、クラーケンはその恐るべき触手で船を海底に引きずり込む災厄であると同時に、また豊漁をもたらす瑞獣として、一方では恐れられ、一方では讃えられていた。
この怪物の正体について、ポントピダン自身は「おそらくポリプあるいはヒトデの仲間に分類されるべきものであろう」と述べているが、後世、それは超大型のタコもしくはイカとして想像されるようになった。これはおそらく、「クラーケンの吐き出す墨によって、あたりの海一面が真っ黒に染まった」という同書の記述からの連想であろう。あるいはスカンディナヴィアの海岸にも打ち上げられるダイオウイカの類いが根拠となったのかもしれない。
いずれにせよ、18世紀フランス最大の博物学者ビュフォンの畢生の大著『一般と個別の博物誌』では、クラーケンは3本マストの帆船を襲う巨大なタコとして図化され、以後、これが海の怪物クラーケンのイメージを決定づけることとなった。現在でもドイツ語のKrakeはタコ、および怪物クラーケンの両方を意味する言葉となっている。

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