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伊豆半島のとある街で、毎年繰り広げられる妖怪vs武将のバトル!60年続く伝統の妖怪退治と厄除けの「奇祭」鵺ばらい祭とは。
平安時代、夜な夜な京都御所の上空に出没しては天皇を苦しめたという妖怪・鵺(ぬえ)。顔はサル、体はトラでしっぽがヘビなどといわれる不気味な合成獣だが、弓の名手として名高い武将源頼政(みなもとのよりまさ)によって射落とされ、退治されたと伝えられる。
そんな鵺退治のようすを再現した祭りが、毎年1月、静岡県伊豆の国市で開催されている。その名も「鵺ばらい祭」。源頼政の奥方であるあやめ御前がこの地の出身という縁からはじめられたもので、もう60年近く続けられている伝統行事だという。21世紀、令和の時代にいったいどんな妖怪退治バトルが繰り広げられているのか……。気になる「奇祭」を見学にいってみた。

2023年の開催は1月29日の日曜日。天候にも恵まれ、会場となる公園は祭りのスタート前からたくさんの人出でにぎわっている。
祭りが始まるとさっそく鵺が登場! ……と思ったら、こちらは鵺をモチーフにしたご当地マスコット「ぬえざえもん」とのこと。たしかに天皇を苦しめた妖怪にしてはだいぶかわいい。子どもたちにも大人気だ。


“本物”の鵺の登場はそのすぐ後。地元中学生が扮した鵺たちだ。さすがにこちらは迫力がある。



わらわらと出現する小鵺と中鵺に続いて姿をあらわす、ラスボス感ただよう大鵺、そして鵺成敗にやってくる源頼政と家臣の武士をはじめ、「鵺おどり」はすべてのキャストが地元中学生によって演じられる。
ドロドロと打ち鳴らされる太鼓とともにはじまる鵺たちの踊り。そこに登場する狩衣姿もりりしい源頼政と、ふたりの鎧武者。まずは小鵺や中鵺をばったばったと斬り伏せていく!


最後に残った大鵺はさすがに3人がかりでの大立ち回りだ。三方から攻撃をくわえ、ついに……


退治された鵺には、神主による祓いがおこなわれる。たとえ妖怪相手でも一方的に倒しただけで終わらない細かい演出、さすが60年の伝統だ! 全体で15分ほどの「鵺踊り」だが、かなり見応えのある構成と中学生の奮闘に感動さえ覚えてしまうのである。

その後は地元の高校弓道部による、弓矢での鵺退治実演が。鵺の描かれた的にバシバシと矢が命中していく。



弓の名手・頼政の再来だ!
祭りはこのあと、地元芸妓連による舞の披露や、二度目の「鵺踊り」があり(なんと鵺踊りは2ステ制! 1回目を見逃してしまっても安心なのだ)、鵺たちに豆をぶつける厄除けの豆まき、そして盛大な餅まきがおこなわれてフィナーレとなる。
伊豆長岡の源氏山には、鵺ばらい祭のきっかけともなった頼政の奥方・あやめ御前の邸宅跡や供養塔、石像などがあり、毎年7月には御前を慰霊する「源氏あやめ祭」も開催されている。


伊豆の国市といえば2022年に大ヒットした大河ドラマ「鎌倉殿の13人」ゆかりの地、北条一族の故郷として注目されたが、もうひとりの縁深い英雄、源頼政に想いを馳せながらの旅も楽しいものになりそうだ。
鹿角崇彦
古文献リサーチ系ライター。天皇陵からローカルな皇族伝説、天皇が登場するマンガ作品まで天皇にまつわることを全方位的に探求する「ミサンザイ」代表。
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